机の上に並んだ弦交換の道具(ストリングワインダー・ニッパー・クロス・新しい弦)

こんにちは!ギターの処方箋TAKAMURA、代表の高村尚平です。

今日は、多くの初心者の方が「なんとなく苦手…」と感じている弦交換のお話をさせてください。

レッスンをしていると、こんな声を本当によく聞きます。「弦交換って、楽器屋さんに持って行ってやってもらうものですよね?」「自分でやると失敗しそうで、こわくて…」と。

その気持ち、すごくよく分かります。ヘッドのペグに弦を巻きつけていく作業って、はじめて見ると、なんだか職人さんの技のように見えますものね。

でも、最初に一番お伝えしたいのは、これです。弦交換は、あなたが自分の手で、おうちで、ちゃんとできます。 特別な才能も、高い工具も要りません。必要なのは、ほんの少しの道具と、順番を知っておくことだけなんです。

そして、これは私がずっと大切にしている考え方なのですが——弦交換は「面倒な作業」ではなくて、お医者さんが患者さんを診るのと同じで、あなたが愛器の状態をいちばん近くで感じ取れる時間だと思っています。弦を外したギターは、普段は見えない指板が現れて、木の乾き具合や汚れまで、正直に教えてくれます。自分で交換できるようになると、ギターとの距離がぐっと近くなるんですね。

この記事では、次のことを、初めての方にも分かるように、ひとつずつ丁寧にお話しします。

  • これだけ揃えば大丈夫、という最小限の道具(買いすぎないコツも正直にお伝えします)
  • 古い弦を外す → 指板を掃除する → 新しい弦を張る → チューニングして落ち着かせる、という4つの手順
  • 初めての人がつまずきやすいポイントと、その先回りの対処法

読み終わる頃には、「こわい作業」が「ちょっと楽しみな時間」に変わっているはずです。それでは、一緒にやっていきましょう。

目次

その前に:弦交換のタイミングと、弦の選び方

「そもそも、いつ換えればいいの?」「どのメーカーの弦を選べばいいの?」——ここが気になる方も多いと思います。でも、これを全部この記事で説明すると長くなりすぎてしまうので、それぞれ別の記事にまとめてあります。まだ読んでいなければ、先にこちらに目を通しておくと、今日の作業がよりスッキリ進みますよ。

この記事は、「張り替える弦はもう手元にある」という前提で、実際の交換作業のやり方に集中してお話ししていきますね。

これだけ揃えばOK:弦交換に必要な道具

まず、いちばん大事なことを正直にお伝えします。弦交換の道具は、そんなにたくさん要りません。 ネットで調べると「あれもこれも必要」と出てきて不安になりますが、初心者の方が最初に揃えるべきものは、実はとてもシンプルです。

※この記事で紹介しているのは、私が実際にレッスンや自分のギターで使ってきて、自信を持っておすすめできる道具だけです。商品リンクの一部はアフィリエイトリンクを含みます。無理に買い揃える必要はありませんので、「なぜ必要か」を読んで、ご自身に要るものだけ選んでくださいね。

【最優先】ストリングワインダー(+ニッパー)

もし「ひとつだけ買うなら?」と聞かれたら、私は迷わずこれをおすすめします。ストリングワインダー——ペグをくるくる回して、弦を巻いたり緩めたりを一瞬で終わらせてくれる道具です。

「指で回せばいいのでは?」と思いますよね。もちろんできます。でも、6本すべてを指だけで巻き上げるのは、想像以上に時間がかかって、指も疲れます。ここで作業が嫌になってしまう初心者の方を、私は何人も見てきました。数百円の道具で「弦交換=面倒」という気持ちがなくなるなら、これは本当に価値のある投資だと思います。

中でも初心者の方におすすめなのが、D'Addario(ダダリオ)の Pro-Winder です。理由はシンプルで、ワインダー・弦を切るニッパー・アコギのブリッジピンを抜く爪、この3役が1本にまとまっているから。別々に買わなくていいので、結果的にいちばん安く、いちばん散らからずに済みます。アコギ・エレキどちらにも使えます。

※すでにニッパー(弦が切れるもの)をお持ちなら、ワインダー単体の安価なもので十分です。手持ちの工具を活かせるところは、無理に買い替えなくて大丈夫ですよ。

【あると気持ちいい】クロス(乾拭き用の布)

弦を外している間は、普段ギターに隠れて掃除できない指板が丸見えになる、絶好のチャンスです。ここでサッと拭いてあげるだけで、ギターの清潔感も手触りも見違えます。

専用のクロスがあると繊維が残らずキレイに拭けますが、正直に言うと、使い古した綿のTシャツやメガネ拭きでも代用できます。まずは家にある柔らかい布で始めて、「これから長く続けそうだな」と思えたら、一枚専用のものを用意する——それで十分です。

【人による】指板オイル(レモンオイル)

これは、少しだけ注意して選んでほしいものなので、正直にお話しします。

指板が乾いてカサついてきたな、というときに保湿してくれるのが指板オイル(レモンオイルなど)です。ローズウッドやエボニーといった、塗装されていない色の濃い指板に、たまに少量なじませてあげると、しっとりして手触りも良くなります。

ただし、ここが大切なところです。すべてのギターに必要なわけではありません。 メイプル指板(つやのある明るい色で、多くは塗装されています)には基本的に不要ですし、ギブソンやマーティンといったメーカーは、揮発性の強いオイルの多用を推奨していない、という考え方もあります。使うときも「ドバッと塗る」のではなく、布に数滴、うっすら——これが鉄則です。

ですので、初めての1回では無理に用意しなくても大丈夫。「指板が明らかに乾いて白っぽい」と感じたときの、次のステップとして覚えておいてください。

【高村流・道具のまとめ】

最初の1回は、「新しい弦」+「ワインダー(ニッパー付き)」+「家にある柔らかい布」——これだけで完璧にできます。オイルや専用クロスは、続けていく中で「欲しいな」と思ったら足していく。買い物で疲れる前に、まずは一度、張り替えてみましょう。

手順①:古い弦を外す

いよいよ作業です。まずは今ついている古い弦を外していきます。ここで初心者の方がよく迷うのが、「6本いっぺんに外していいの?」という点。順番に理由からお話ししますね。

結論から言うと、普段の弦交換なら、全部まとめて外してしまって大丈夫です。 「ネックが反るのでは?」と心配される方がいますが、弦を外している数十分程度で、ギターがダメになるようなことはまずありません。指板の掃除もしやすいので、慣れてきたら全部外す方が快適です。

手順はこうです。

  • ワインダーでペグを回し、弦をしっかり緩めます。 どちら向きに回すか分からないときは、少し回してみて「音が低くなる(=緩む)方向」を確かめてから続けると失敗しません。
  • 十分に緩んで、弦がフニャフニャになったら、ニッパーで切ってしまってOKです。 ピンと張ったまま切ると弦が勢いよく跳ねて危ないので、必ず「緩めてから切る」。これだけは守ってください。
  • アコギは、ブリッジのピンを抜いて弦を外します。Pro-Winder の先端の爪を使うと、テコの原理で気持ちよく抜けます。指や硬いもので無理にこじると割れることがあるので、ここは専用の爪が活きるところです。

手順②:指板を掃除する(この時だけの特等席)

弦がなくなった今こそ、普段できない指板のお掃除タイムです。ここを一手間かけるかどうかで、仕上がりの気持ちよさが変わります。

やることはシンプルで、クロス(または柔らかい布)で、フレットと指板の汚れを乾拭きするだけ。長く弾いてきたギターだと、フレットの脇に手垢が黒く溜まっていることがあります。これがサッと落ちると、それだけで気分が上がりますよ。

もし指板が乾いて白っぽいと感じたら、ここで先ほどの指板オイルを、布に数滴だけ取ってうっすら塗り込みます。塗ったら少し置いて、余分は必ず乾拭きで拭き取ってください。「塗りすぎない」が、指板を長持ちさせるコツです。塗らなくても問題ない指板も多いので、迷ったら無理に塗らなくて大丈夫です。

手順③:新しい弦を張る

ここが弦交換の山場ですが、コツさえ掴めば難しくありません。初心者の方がつまずきやすいのは、「ペグへの巻き方」。ここを丁寧にいきましょう。

  • まず、弦の太い方(ボールエンド側)を、ブリッジ側にしっかり固定します。アコギはブリッジの穴に入れてピンで留め、エレキはボディ裏またはブリッジから通します。
  • 反対側をペグの穴に通したら、いきなりピンと張らず、少したるみ(ゆとり)を持たせるのがポイントです。このたるみが、後でペグに巻きつく「巻き数」になります。巻き数の目安は、細い弦で3〜4回、太い弦で2〜3回ほど。多すぎるとチューニングが不安定になり、少なすぎると滑って緩みやすくなります。
  • ワインダーでペグを回して巻き上げていきます。このとき、弦が上から下へ、隙間なくきれいに重ならず並んで巻かれていくように、もう一方の手で弦を軽く導いてあげると仕上がりがきれいです。見た目が整っていると、チューニングも安定しやすくなります。

6本すべて巻き終えたら、ペグから飛び出た余分な弦をニッパーで切ります。切り口の先端は鋭くて危ないので、指を引っかけないよう、根元近くで短く切っておきましょう。

手順④:チューニングして、弦を「落ち着かせる」

張り替えたばかりの弦は、まだ伸びる余地が残っているので、チューニングしてもすぐに音が下がってきます。 「せっかく合わせたのにまた狂う…もしかして失敗した?」と不安になりがちですが、これは新品の弦なら当たり前の現象なので、どうか安心してください。失敗ではありません。

やることは、この繰り返しです。

  • チューナーで各弦を合わせます。クリップチューナーの選び方はこちらの記事にまとめてありますので、お持ちでなければ参考にしてください。
  • 合わせたら、各弦を指で軽く引っ張って(「弦を伸ばす」)、わざと少し緩ませます。 こうすると、これから自然に起きる「伸び」を先に済ませてしまえるので、狂いが早く落ち着きます。
  • もう一度チューニング。これを2〜3回繰り返すと、音程がだんだん安定してきます。

そして——全部の弦を張り終えて、はじめてジャラーンとコードを鳴らしたときの、あのキラキラした音。ぜひ味わってください。自分の手で蘇らせた音ですから、格別ですよ。

よくあるつまずきQ&A

Q. 巻いている途中で弦を切ってしまいました…

大丈夫、初心者の方には本当によくあることです。落ち込まないでください。原因のほとんどは「ペグにたるみを持たせず、いきなり強く巻きすぎた」こと。だから予備の弦は、1〜2セット多めに持っておくと安心です。1本だけ切れたときのために、バラ弦を用意しておくのも賢いやり方ですよ。

Q. 張り替えたら音がビビる(ビリビリ鳴る)ようになりました

多くは「巻き数が少なくてペグ周りが緩い」か「弦がナットの溝にきちんと収まっていない」ことが原因です。まずは各弦がナットの溝に正しくハマっているか、ペグの巻きが緩んでいないかを見直してみてください。それでも直らない場合は、ギター本体の調整(ナットやネックの状態)が関係していることもあります。

Q. やっぱり自分でやるのが不安です

無理をする必要は、まったくありません。最初は誰かにそばで見てもらえると、安心感がぜんぜん違います。私のレッスンでも、ご希望があれば弦交換を一緒にやってお見せしています。「先生が張り替えているのを動画に撮れたので、次は一人で頑張れそうです!」と言ってくれる生徒さんが、本当に多いんですよ。

まとめ:弦交換ができると、ギターはもっと好きになる

今日は、初めての弦交換について、道具から手順までお話ししてきました。ポイントをおさらいしますね。

  • 道具は「新しい弦+ワインダー(ニッパー付き)+柔らかい布」があれば十分。買いすぎなくていい。
  • 手順は①緩めて外す → ②指板を掃除 → ③たるみを持たせて張る → ④チューニングして落ち着かせるの4ステップ。
  • 新品の弦がすぐ狂うのは失敗ではなく当たり前。数回合わせ直せば落ち着く。

弦交換は、最初の一回だけ少し勇気が要ります。でも、一度自分の手でやり遂げてしまえば、二回目からは驚くほど気楽になります。そして何より、「楽器店に持って行かなくても、自分でギターの面倒を見られる」——この小さな自信が、あなたとギターの関係を、もう一段深くしてくれるはずです。

好きなことを、自分の手で少しずつできるようになっていく。その積み重ねが、いつのまにか大きな自信になっていく。私がギターを通じてずっとお伝えしたいのは、まさにそこなんです。

この記事が、あなたの「はじめての弦交換」の、心強い相棒になれたら嬉しいです。うまくいったら、ぜひあのキラキラの音を、思いっきり楽しんでくださいね。

高村尚平 プロフィール写真

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