ギターコードの覚え方、もう「Fコード」で挫折しない!プロが実践する「3つの壁」の越え方と科学的練習法

こんにちは!ギターの処方箋TAKAMURA、代表の高村尚平です。
このページにたどり着いたあなたは、今、こんな風に感じてはいませんか?
「ギターを始めたものの、次から次へと出てくるコードの数に、頭がパンクしそう…」
「C、G、Am、Dm、E7…。まるで暗号のようなアルファベットの羅列を前に、教本やスマホの画面を見ては、ため息をついてしまう…」
昨日、あれほど時間をかけて必死に覚えたはずのコードの形が、今日ギターを手に取ってみたら、どうしても思い出せない。そんな経験を繰り返すうちに、「もしかして自分は、他の人より記憶力がないんじゃないか…」と、自信をなくしてしまってはいないでしょうか。
もし、あなたが少しでもこのように感じているのなら、私がまず、力強くお伝えしたいことがあります。
コードが覚えられないのは、あなたの記憶力や才能のせいでは、断じてありません!
あなたがコードを覚えられずに苦しんでいるとしたら、その原因はたった一つ。それは、ギターのコードを、学校の英単語や歴史の年号のように「丸暗記」で乗り越えようとしているからです。
ご安心ください。ギターのコードは、無味乾燥な記号の羅列ではありません。一つひとつに意味があり、コード同士には関係性、いわば「物語」があるのです。その物語を知れば、脳はもっと効率的に、そして楽しくコードを記憶してくれます。
この記事では、私がギター講師として、日々たくさんのギタリストが抱える悩みと向き合う中で体系化した、「脳の仕組み」に沿った効率的なコードの覚え方を、余すところなくお伝えします。
この記事を最後まで読み終える頃には、
- なぜ今までコードが覚えられなかったのか、その「脳の仕組みに基づいた本当の理由」が分かります。
- 丸暗記に頼らない、音楽と関連付けた「忘れにくい記憶術」が手に入ります。
- コードを「覚える苦しい作業」から、コードを使って「音楽を奏でる楽しいパズル」へと、あなたの意識はガラリと変わっているはずです。
実は私自身も、ギターを始めたばかりの頃は、分厚いコードブックをただただ眺めて、「これを全部覚えないと、曲って弾けないのか…」と、その数の多さに途方に暮れた日がありました。だからこそ、今あなたが感じている「覚えることへのプレッシャー」が、私にはよく分かるのです。
さあ、無意味な暗記作業は今日で終わりにしましょう。私と一緒に、あなたの脳を最大限に活用して、コードという名の「音楽のコトバ」を、楽しく、そして賢くマスターしていく旅に、今すぐ出発しましょう!
📋 目次
1. なぜあなたはコードで挫折するのか?~全ての元凶「3つの壁」の正体~
さて、「はじめに」では、コードが覚えられないのはあなたの才能や記憶力のせいではない、とお伝えしました。
では、一体なぜ私たちは、ギターのコードを覚える段階で、あんなにも苦しい思いをしてしまうのでしょうか?「難しい」という一言で片付けてしまうのは簡単ですが、それでは解決策は見えてきません。
何事も、まずは問題の正体を正確に知ることが、解決への一番の近道です。安心してください、あなたが今感じている「難しさ」の正体は、実はとてもシンプルに整理することができます。
1-1. 多くの人が気づいていない、挫折の本当の理由
ギターを始めたばかりの方が直面する困難は、決して一つではありません。実は、ほとんどの方が、3つの異なる種類の「壁」に同時にぶつかってしまっているのです。だから、余計に混乱し、「自分には向いていないのかも…」と感じてしまうのですね。
その3つの壁とは、
- 【物理的な壁】(体の問題)
- 【頭脳的な壁】(記憶の問題)
- 【精神的な壁】(心の持ちようの問題)
です。一つずつ、見ていきましょう。あなたも「あ、これ自分のことだ」と思い当たる節があるはずですよ。
1-2. コード習得を阻む「3つの壁」とは?
【物理的な壁】~体が言うことを聞いてくれない!~
これは、最も直接的に感じる壁かもしれません。「コードを覚える」以前に、そもそも体が思うように動いてくれない状態です。
- 指が痛くて、弦を長く押さえていられない。
- 隣の弦に指が触れてしまい、音が「ポーン」と鳴ってくれない。
- そもそも、お手本のような指の形が作れない。指が届かない。
頭では分かっていても、体がついてこない。そんなもどかしさが、この壁の正体です。
【頭脳的な壁】~情報が多すぎて覚えられない!~
まさに、今回あなたがこの記事にたどり着いた、一番の悩みかもしれません。次から次へと出てくる情報を、脳が処理しきれていない状態です。
- 「C」や「G」といったアルファベットと、指の形がなかなか結びつかない。
- 新しいコードを覚えると、前に覚えたはずのコードを忘れてしまう。
- コード進行と言われても、なぜその順番なのか、意味が全く理解できない。
これは、記憶力の問題ではなく、「記憶の仕方」に問題があるケースがほとんどです。
【精神的な壁】~「楽しい」より「辛い」が勝ってしまう!~
上記の「物理的な壁」と「頭脳的な壁」、この二つにぶつかり続けることで生まれる、最も厄介な壁です。モチベーションが続かなくなってしまう状態ですね。
- 頑張って押さえても、濁った音しか出ないので、全く達成感がない。
- 曲に合わせてコードを変える(コードチェンジ)なんて、夢のまた夢に感じる。
- 成長している実感がなく、だんだんギターに触れること自体が億劫になってくる。
「楽しい」と感じる前に「辛い」が上回ってしまうと、人間、どうしても続けるのは難しくなってしまいます。
いかがでしょうか?この3つの壁は、それぞれが独立しているようで、実は「指が痛い(物理)→だから練習が嫌になる(精神)」「覚えられない(頭脳)→だから達成感がなく楽しくない(精神)」というように、密接に絡み合って、あなたを苦しめているのです。

1-3. 家の土台作りと同じ!焦りが全てを台無しにする
そして、この3つの壁をさらに高く、分厚くしてしまう最大の原因が「焦り」です。
ここでもう一度、私がよくする「家を建てる」という話をさせてください。
ギターの上達というのは、家を建てるプロセスと本当によく似ています。立派な家(=好きな曲をスラスラ弾ける状態)を建てるためには、何よりもまず、地面を固めてコンクリートを流し込む「基礎工事」が不可欠ですよね。
この基礎工事を行わずに、いきなり柱を立て、壁を作り、屋根を乗せようとしても、家はぐらぐらですぐに崩れてしまいます。
ギターにおける基礎工事とは、
- 「最小限の力で弦を押さえる方法を知ること」(物理)
- 「コード同士の関係性を理解すること」(頭脳)
- 「最初は完璧な音が出なくてもOKだと知ること」(精神)
といった、地味ながらも非常に重要な土台作りのことを指します。
多くの人が、この基礎工事をすっ飛ばして、いきなり大好きなアーティストの難しい曲(=立派な家)に挑戦してしまう。だから、3つの壁にまともに衝突して、挫折してしまうのです。
有名な「Fコードの壁」も、全く同じ理屈です。あれは、Fコードという壁自体が断崖絶壁なのではなく、そこに至るまでの「基礎工事」が不十分なまま壁に挑んでしまうから、とてつもなく高く、乗り越えられない壁に感じてしまうだけなのです。
大丈夫。壁の正体が分かれば、壊し方も分かります。
この後の章では、今お話しした「物理的」「頭脳的」「精神的」という3つの壁を、一つずつ、具体的な方法で壊していくやり方を詳しくお伝えしていきます。
まずは、最もとっつきやすく、そして効果が実感しやすい「物理的な壁」の壊し方から、一緒に攻略していきましょう!
2. 【物理的な壁の壊し方】あなたの指を「ギターが弾ける指」に改造する
さて、ここからは第1章でお話しした3つの壁を、一つずつ具体的に壊していきます。まず最初に攻略するのは「物理的な壁」。つまり、あなたの体の使い方そのものを見直していくチャプターです。
「あれ?今回はコードの『覚え方』を知りたくて来たんだけどな…」
もしかしたら、そう思われたかもしれませんね。そのお気持ち、よく分かります。ですが、少しだけ想像してみてください。
もし、コードを押さえること自体が全く苦ではなくなり、指も痛くならず、スッと楽に押さえられるようになったら…?
きっと、コードの形を繰り返し確認する練習も、今よりずっと前向きに取り組めるようになるはずです。つまり、楽に押さえられる「体の使い方」を知ることは、結果的にコードを覚えるスピードを劇的に加速させる、最高の準備運動になるのです。
騙されたと思って、ぜひこの章の内容を試してみてください。驚くほどギターを弾くのが楽になりますよ。
2-1. ギターはスポーツだ!怪我なく上達する指の準備運動
いきなり100mを全力疾走するアスリートがいないように、ギターもまた、いきなり弾き始めるのは指にとって負担が大きいものです。私はよく「ギターは一種の精密な指のスポーツだ」とお伝えしています。
まずは、演奏を始める前に指の筋肉を優しくほぐし、怪我を防ぐための簡単な準備運動を習慣にしましょう。
演奏前の指ストレッチ
- 手のひらを上に向け、もう片方の手で指を1本ずつ、優しく甲の側に5秒ほど反らします。これを全ての指で行います。
- 次に、指をゆっくり、力強く握り込む「グー」の形と、思い切り開く「パー」の形を、5〜10回繰り返します。
たったこれだけです。血行が良くなり、指が動きやすくなるのを実感できるはずです。
簡単な指のストレッチで、怪我を防ぎ、指の動きをスムーズにしましょう。
2-2. 「最小限の力」で押さえる秘訣。楽に弾けるエコフォーム習得術
初心者の頃の指の痛みは、誰もが通る道…ではありません!実は、その痛みのほとんどは、必要以上の力でギターのネックを握りしめてしまっていることが原因なのです。
ここでは、最小限の力で、楽に、そして綺麗な音を出すための「エコなフォーム」の3つの秘訣をお伝えします。
ポイント①:親指の位置が全てを決める
コードを押さえる上で、最も重要なのが左手の親指の位置です。ここが定まっていないと、他の4本の指は安定しません。
- 理想の位置: ネックの裏側の、真ん中あたり。指板の上から親指の頭が見えないくらいの位置がベストです。
- 意識すること: 人差し指と親指で、ネックを「つまむ」ような、あるいは「OKサイン」を作るようなイメージです。決して、手のひら全体で「握り込む」のではありません。
親指をネック裏の中央に置く(左)のが理想。ネックを握りこむ(右)のはNG。
ポイント②:指を「立てる」本当の意味
「指を立てて押さえましょう」とよく言われますが、これは指先に力を込めろ、という意味ではありません。本当の意味は、「押さえている弦以外の、余計な弦に指が触れないように、指の関節をしっかりと曲げましょう」ということです。
そのためには、爪を常に短く切っておくことが絶対条件です。爪が伸びていると、指を立てたつもりでも爪が指板に当たってしまい、結果的に指が寝てしまいます。これでは絶対に綺麗な音は出ません。
指の関節をしっかり曲げ、他の弦に触れないようにするのが「指を立てる」ということ。
ポイント③:フレットのすぐそばを狙え!「ゴールデンポイント」
弦を押さえる時、フレット(金属の仕切り)とフレットの間の、どこを押さえていますか?実は、最も小さな力で、最もクリアな音が出る「魔法の場所」が存在します。
それは、フレットのすぐ左隣(ヘッド側)です。
てこの原理で、フレットのすぐそば(ゴールデンポイント)を押さえるのが最も効率的。
これは「てこの原理」と同じで、力点(指)が支点(フレット)に近ければ近いほど、効率的に力を伝えられるのです。私はこの場所を「ゴールデンポイント」と呼んでいます。フレットの真ん中あたりを押さえるのとでは、必要な力が半分くらいに感じられるはずですよ。
ただ、気をつけたいのは、コードを押さえる際、ゴールデンポイントを狙うがあまり、不自然なフォームになってしまうことです。
あくまでも自然に置ける範囲の中で、フレットに近づける意識を持つと良いということです。
2-3. 1日5分から!指の形を体に覚え込ませる基礎トレーニング
さて、エコフォームの理屈が分かったら、それを体に染み込ませるための簡単なトレーニングを行いましょう。テレビを見ながらでもできるくらい簡単な内容なので、ぜひ毎日の習慣にしてみてください。
コードフォーム記憶トレーニング
- まずは、比較的押さえやすい「C」のコードで試してみましょう。
- 先ほど学んだエコフォームの3つのポイントを意識しながら、ゆっくりと「C」の形を作ります。
- 形ができたら、一度右手の親指でポロ〜ンと5弦から全部鳴らしてみます。(この時、綺麗な音が出なくても全く気にする必要はありません!)
- 次に、ここが重要です。Cを押さえていた全ての指を、弦から5cmほど、パッと同時に離します。
- そしてまた、ゆっくりと「C」の形に戻します。
- この「押さえる → 離す」の動作を、1分間、自分のペースで繰り返します。
このトレーニングの目的は、音を綺麗に出すことではありません。「正しいフォームで、素早くコードの形を作る」という動作そのものを、脳と指に記憶させることです。
これを毎日たった5分続けるだけで、1〜2週間後には、あなたの指の動きが驚くほどスムーズになっていることに気づくはずです。
いかがでしたでしょうか?まずはこの「物理的な壁」を取り払うだけで、ギターを弾くことへの抵抗感やストレスが、ぐっと減るはずです。指の痛みが和らげば、次のステップである「頭脳的な壁=コードを覚えること」にも、ずっと前向きに取り組めるようになりますからね。
さあ、ウォーミングアップは完了です。次はいよいよ、あなたの最大の悩みである「頭脳的な壁」を壊すための、記憶術をお伝えします。丸暗記の世界から、あなたを解放しますので、ぜひ楽しみにしていてくださいね!
3. 【頭脳的な壁の壊し方】丸暗記不要!科学的に記憶をハックする
第2章で「物理的な壁」が取り払われ、ギターを楽に押さえるための準備が整いましたね。いよいよ本丸、あなたが最も知りたかったであろう「頭脳的な壁」の攻略です。
「Cの次はGで、その次はAm…」
ギターを練習していると、なぜか多くの曲で、同じようなコードの組み合わせが使われていることに気づきませんか?実はそこには、あなたがコードの暗記地獄から抜け出すための、大きなヒントが隠されているのです。
学校の勉強のような丸暗記は、今日で終わりです。ここからは、あなたの脳をフル活用して、音楽的に、そして効率的にコードを記憶する方法を学んでいきましょう。
3-1. もう混乱しない!コードを「仲間(ファミリー)」で覚える
まず、大前提として知っておいてほしいことがあります。それは、コードは一つひとつがバラバラに存在するのではなく、実は仲の良い「グループ」を作っている、ということです。
私はこれを、「コード・ファミリー」という言葉で説明しています。
例えば、皆さんが音楽の授業などで一度は聞いたことがあるであろう「ハ長調」。英語で言うと「Cメジャーキー」というのですが、このキー(調)で主役となるコードのファミリーは、基本的に以下の6人です。
【Cメジャーキー・ファミリーの主要メンバー】
C | Dm | Em | F | G | Am
(※今は「なんでmが付くのと付かないのがあるんだろう?」などと、深く考えなくて全く大丈夫です!「へぇ、この6つが仲間なんだ」くらいに思ってください。)
この6つのコードは、言わば同じ家に住む家族のようなもの。だから、お互いにとても相性が良く、曲の中でどのようにつなげても、心地よい響きを生み出しやすいのです。
特に、世界中のヒット曲で使われている「C → G → Am → F」というコード進行。これは、ファミリーの中でも特に仲の良い4人組が、順番に自己紹介をしているような、とても自然で王道の「物語(ストーリー)」なのです。だから、私たちの耳にはあれほど心地よく響くんですね。
このように、コードを無機質な記号として一つずつ覚えるのではなく、「Cファミリー」というグループで捉え、その中での関係性や物語を感じるようにする。たったこれだけで、無味乾燥だったアルファベットの羅列が、意味のある繋がりとして、ずっと記憶に残りやすくなるのです。
3-2. 脳科学が証明した、最も効率的な記憶術
さらに、私たちの「脳の仕組み」を少しだけ利用すると、記憶の効率は飛躍的にアップします。難しい話ではありません。今日からすぐに使える、2つの簡単なテクニックをご紹介します。
テクニック①:分散学習(短く、何度も)
私たちの脳は、一度にたくさんの情報を詰め込まれるのがとても苦手です。よく「休日に3時間まとめて練習するぞ!」と意気込む方がいますが、記憶の定着という観点では、実はあまり効率的ではありません。
それよりも、「1日に10分だけの練習を、毎日続ける」方が、脳は情報を「重要なもの」と認識し、長期的な記憶として保存してくれやすくなります。これを「分散学習」と言います。
まさに「継続は力なり」。毎日少しずつ、が最強の練習法なのです。
テクニック②:アクティブリコール(思い出す練習)
そして、記憶を定着させる上で、科学的に最も効果が高いと証明されているのが、この「思い出す」という作業です。専門用語では「アクティブリコール」と言います。
教本やアプリの画面を見ながらコードを押さえるのは、実は脳にとっては「見ながら指を動かす作業」に過ぎず、あまり記憶に残りません。
本当に効果的なのは、何も見ずに、「えーっと、Gのコードの形って、どうだったっけ…?」と、自分の頭の中から必死に情報を引き出そうとする、このプロセスです。
もちろん、最初は全く思い出せないでしょう。それでいいんです。思い出せなくて、答えを見て、「ああ、そうだった!」となる。そしてまた何も見ずに思い出そうとしてみる。この繰り返しこそが、脳の神経回路に「このコードの形は、生きていく上で超重要だぞ!」と教え込む、最強のトレーニングなのです。
3-3. まずはこれだけ!初心者のための「コードスターターパック7」
「理屈は分かったけど、じゃあ結局、何から覚えればいいの?」そう思われたかもしれませんね。お任せください。
世の中には無数のコードが存在しますが、初心者のあなたが最初にマスターすべきコードは、たったの7つです。まさに「コードスターターパック7」といえるこれらのコード群をまずは覚えてみてください!
【コードスターターパック7】
C | G | Am | Em | F | D | Dm
実は、この7つのコードを覚えるだけで、驚くことに、J-POPや洋楽のヒット曲の、かなりの割合を弾けてしまうんです。(Fは少し難しいですが、第5章で簡単な押さえ方を紹介するのでご安心を!)例えば、スピッツさんの『チェリー』や、あいみょんさんの『マリーゴールド』といった名曲も、主にこれらのコードで構成されています。
【番外編】ロック好きなら「パワーコード」が最強の味方!
もしあなたが、ロックやパンクといったジャンルが好きなら、もっと簡単な近道があります。それが「パワーコード」です。
パワーコードは、たった1つの指の形で、ネック上のどこにでも移動できる、まさに魔法のようなコード。これさえ覚えれば、難しい理屈は抜きにして、たくさんのロックナンバーを今すぐにかき鳴らすことができますよ!
この形一つでどこへでも移動できるのがパワーコードの魅力。
丸暗記の世界から、少し抜け出せそうな気がしてきましたか?
コードを「ファミリー」で捉え、脳の仕組みを利用し、そして覚えるべきものをギュッと絞り込む。これが、あなたが「頭脳的な壁」をストレスなく、そして楽しく乗り越えるための鍵です。
さあ、物理的な壁を壊し、頭脳的な壁も壊し始めました。残るは最後の壁だけです。次の章では、ギターの練習そのものを「辛い修行」から「夢中になれるゲーム」へと変えるための、とっておきの方法をお伝えします!
4. 【精神的な壁の壊し方】「楽しい!」が最強のガソリンになる
さて、いよいよ最後の壁、「精神的な壁」の攻略です。
どんなに正しいフォームを知り、どんなに効率的な覚え方を学んだとしても、「練習が楽しくない」「辛い」と感じてしまっては、私たちの足は自然とギターから遠のいてしまいます。
大げさではなく、このモチベーションの維持こそが、挫折せずにギターを一生の趣味にするための、最大の鍵なのです。
私の教室は、生徒さんのモチベーションをいつでも満タンにする、ガソリン・スタンドのような場所でありたいという思いから「モチベーション・スタンド」と呼んだりもしています。この章が、あなたの心にとっての「セルフ式ガソリンスタンド」になれば嬉しいです。
ギターの練習を「辛い修行」から「夢中になれるゲーム」へと変える、ちょっとした考え方のコツと、具体的な方法をご紹介しますね。
4-1. 完璧主義を捨てよう!最初は綺麗な音が出なくても大正解
ギターを始めたばかりの方が陥る、最大の罠。それは、「CDから流れてくる、あの完璧なギターサウンド」を、初日から目指してしまうことです。
気持ちは痛いほど分かります。しかし、一旦その考えは、横に置いておきましょう。プロがCDで鳴らしている音は、文字通り何千回、何万回と練習を重ね、最高の機材と環境で録音された、いわば奇跡のテイクです。それを最初から目指すのは、自転車の練習を始めたばかりの子が、いきなりF1レースに出ようとするようなもの。
では、どうすればいいか?答えは簡単。綺麗な音を出すことよりも、まずはギターをかき鳴らす「楽しさ」と「快感」を優先することです。
最初は、いくつかの弦の音が詰まって異音を発生させてしまっても全く構いません。そんなことよりも、お気に入りの曲に合わせて、気分はスタジアムのステージの上!そんな気持ちで、思い切り右手を振ってギターをジャラーン!とかき鳴らしてみてください。
その、体が震えるような振動と、部屋に広がる生音の迫力。それこそが、ギターが持つ原始的な魅力なのです。
少し専門的な話をすると、プロの演奏をよーく聴いてみると、実は意図的に弦の音を消した「ミュート音」を効果的に混ぜて、楽曲の「グルーヴ(ノリ)」を生み出していることも多いのです。ですから、あなたの出す濁った音も、見方を変えれば「未来のグルーヴの素」とも言えます。そう前向きに考えれば、少し気が楽になりませんか?
4-2. ゲーム感覚でハマる!コードチェンジ上達ドリル
ギター練習の中でも、特に単調で飽きやすいのが「コードチェンジ」の反復練習です。この退屈な練習を、エキサイティングなゲームに変えてしまいましょう。私が「2コード・レベルアップドリル」と呼んでいる方法です。
2コード・レベルアップドリル
- まずは、比較的簡単な2つのコードを選びます。(例:「Em」と「C」など)
- スマートフォンの無料メトロノームアプリを用意し、テンポをBPM=60くらいに設定します。(BPMとは1分間の拍数のこと。60なら時計の秒針と同じ速さです)
- メトロノームの「カッ、カッ、カッ、カッ」という音に合わせて、4拍に1回、コードを切り替えます。「イーマイナー、2、3、4、シー、2、3、4…」といった具合です。
- まずは1分間、一度も間違えずに、かつリズムに合わせてチェンジできるか挑戦します。
- クリアできたら、自分を思い切り褒めてあげて、BPMを「2」だけ上げます(BPM=62に設定)。
- また1分間挑戦し、クリアできたらBPMをさらに「2」上げる…。これを繰り返します。
どうでしょう?まるでRPGで経験値を稼いでレベルアップしていくように、自分の成長が「BPM」というハッキリとした数字で見えてきます。昨日の自分が出した記録を、今日の自分が塗り替えていく。この達成感が、驚くほどモチベーションに火をつけてくれるのです。
4-3. 成長を「見える化」する魔法のツールたち
人間は、自分の成長を客観的に確認できると、やる気が湧いてくる生き物です。そのための、誰でもできる簡単な「見える化」の魔法を2つご紹介します。
① カレンダーにシールを貼る
とてもアナログですが、効果は絶大です。どんなに短い時間でも構いません。5分でもギターに触った日は、カレンダーに好きなシールを貼ったり、花丸を描いたりしてみましょう。
1ヶ月後、カレンダーがあなたの頑張りの証で埋め尽くされているのを見た時、それは「自分、こんなに続けたんだ!」という大きな自信と喜びに変わるはずです。
② スマホで1分だけ録画・録音する
そして、これが最も効果的な「見える化」の方法です。
今日のあなたの演奏を、たった1分でいいので、スマートフォンの録画機能やボイスメモ機能で記録しておきましょう。そして、1週間後、また同じように1分間だけ録画・録音して、聴き比べてみてください。
あなた自身は「全然上手くなっていない…」と感じているかもしれません。しかし、記録された音は嘘をつきません。1週間前の自分と比べると、コードチェンジの「ジャカジャカ」という雑音が少し減っていたり、鳴らなかった弦の音が少しだけ鳴るようになっていたり…。
その、自分では決して気づけないような「わずかな成長」に気づくことが、何よりも強力な心のガソリンになります。「1週間前の自分」こそが、最高のライバルであり、あなたを一番勇気づけてくれる応援団なのです。
さあ、これで「物理」「頭脳」「精神」という3つの壁は、全て壊されました。もうあなたは、コードごときで挫折するような、か弱い初心者ではありません。あとは、ギターを弾くという最高の楽しみを、心ゆくまで満喫するだけです。
最後の章では、今日からあなたが具体的に何をすればいいのかというアクションプランの総まとめと、多くの初心者の方が抱える質問にお答えしていきます。ゴールはもう目の前です!
5. ギターコードの覚え方【よくある質問 Q&A】
さて、いよいよ最後の章となりました。ここまで読み進めてくださったあなたは、もうコードに対する苦手意識は、かなり薄れているのではないでしょうか。
この章では、私が普段のレッスンで生徒さんからよくいただく質問や、多くの方が疑問に思いそうな点について、Q&A形式でまとめてお答えしていきます。あなたの最後の「?」を、ここでスッキリ解消していきましょう!
- Q1. どうしても手が小さくて、指がコードの形に届きません。どうすればいいですか?
-
A. ご安心ください。手の大きさは、ギターの上手さとは直接関係ありません。世界的に有名なギタリストの中にも、驚くほど手の小さな方はたくさんいらっしゃいます。
まず試していただきたいのは、第2章でお伝えした「親指の位置」の見直しです。ネックの上から親指を出して握り込むようなフォームになっていると、他の指の可動域が極端に狭くなってしまいます。親指をネックの裏側の中央にそっと置くだけで、指が驚くほど自由に動くようになり、今まで届かなかった場所にも楽に届くようになるケースは非常に多いです。
その上で、もし可能であれば、楽器店でネックが細いギターや、ネックが少し短い「ショートスケール」「ミディアムスケール」と呼ばれるギターを試奏させてもらうのも良いでしょう。「手が小さいのですが…」と相談すれば、店員さんがきっとあなたにぴったりの一本を提案してくれますよ。ただ、一つ言えるのは手のサイズとギターの上達は相関関係がほとんどないということです。以下の動画で最強に手の小さいギタリスト…僕ですが…のメッセージをご覧ください。
- Q2. 噂の「Fコード」を簡単にする“裏ワザ”のようなものはありますか?
-
A. はい, もちろんです!「裏ワザ」というより、誰もが通る王道の「近道」と言った方が良いかもしれません。
Fコードが難しいと言われる最大の理由は、人差し指で複数の弦(最終的には6本)を同時に押さえる「セーハ」というテクニックが必要だからです。しかし、最初から完璧なFコードを目指す必要は全くありません。
まずは、人差し指で1弦と2弦の1フレットだけを押さえる、下の図のような「省略形F(簡単F)」から始めてみてください。これでもコードの響きを構成する主要な音は鳴っているので、立派なFの仲間です。
完璧なF(左)が難しければ、まずは簡単なF(右)から始めよう。ほとんどのJ-POPの曲なら、この「簡単F」で全く問題なく弾けてしまいます。難しいFで立ち止まってしまうくらいなら、まずはこの形で曲を弾く楽しさを存分に味わってください。そのうちに指の力も自然とついてきて、気づいた頃には、正式なFコードも楽に押さえられるようになっていますよ。
あわせて読みたい 【挫折率9割】ギターFコードの押さえ方とコツ|簡単フォームで今日から弾ける! - Q3. 1日にどれくらい練習すれば、コードを覚えることができますか?
-
A. これは本当によくいただく質問ですね。私の答えはいつも決まっています。「時間の長さよりも、触れる頻度が何よりも大切です」と。
第3章でお話しした「分散学習」の考え方と同じで、週に一度、日曜日に3時間まとめて練習するよりも、毎日たった5分でもギターに触れる習慣がある人の方が、上達のスピードは何倍も速いのです。
今日のあなたの目標は「30分練習すること」ではありません。「ギターのケースを開けて、一度ギターを構えてみること」。まずはそれくらいの、ものすごく低いハードルを設定してみてください。一度触ってしまえば、意外と5分、10分と弾いてしまうものですよ。
あわせて読みたい ギターが爆速で上達する練習法|挫折率9割減の3ステップ - Q4. コードを覚えるのに、おすすめの練習曲はありますか?
-
A. 素晴らしい質問です!覚えたてのコードを、すぐに実際の曲で使ってみること。これ以上に楽しくて効果的な練習はありません。
第3章でご紹介した「コードスターターパック7(C, G, Am, Em, F, D, Dm)」、そしてQ2の「簡単F」を使えば弾ける曲は無数にありますが、特におすすめなのは以下のような曲です。
- スピッツ『空も飛べるはず』
- 斉藤和義『歩いて帰ろう』
- あいみょん『マリーゴールド』
- MONGOL800『小さな恋のうた』
インターネットで「(曲名) ギター 簡単コード」といったキーワードで検索すれば、初心者向けにアレンジされた楽譜がたくさん見つかりますので、ぜひ挑戦してみてください。以下の記事にもおすすめ曲とコードを載せてありますのでご覧ください!
あわせて読みたい ギター初心者必見!カポなし・バレーコード(セーハ)なしで弾ける人気曲10選【2025年版】 - Q5. やはり独学では限界がありますか?ギター教室に通うメリットは何ですか?
-
A. 独学でも、ある程度のレベルまで上達することは十分に可能です。ただ、どうしても個人差が出てしまうことと、強制力がないので、やる気を保つのが難しいという問題があります。もしあなたが「できるだけ回り道をせず、最短距離で、かつ挫折の可能性を限りなくゼロにして上達したい」と願うなら、ギター教室は非常に強力な味方になります。
メリットは主に3つです。
- 客観的な視点でのフォーム矯正:自分では気づけない「力の入りすぎ」や「非効率的な指の動き」を、専門家が客観的に指摘してくれるので、悪い癖がつく前に対処できます。
- モチベーションの維持:まさしく「モチベーション・スタンド」ですね。定期的に通うことで練習のペースが作れますし、講師という伴走者がいることで、一人で悩む時間が劇的に減ります。
- あなただけの最適化された練習メニュー:今のあなたに、何が一番必要なのかを的確に見極め、最適な練習メニューを提案してくれます。これは、まるで専属のパーソナルトレーナーがいるようなものです。
もしご興味があれば、全国のギターの処方箋TAKAMURAでも、あなたの悩みや目標に合わせたマンツーマンレッスンを提供しています。オンラインでのレッスンも可能ですので、全国どこからでもご受講いただけます。お気軽にご相談くださいね。
6. まとめ:コードは音符のパズル、ギターは一生の相棒
ここまで本当にお疲れ様でした。そして、長い道のりだったにもかかわらず、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます。
もう、大丈夫。今のあなたは、かつてあれほど高く、分厚く見えていた「コードの壁」を乗り越えるための、全ての知識と具体的なツールを手に入れたはずです。
この記事全体を、簡単におさらいしましょう。
【3つの壁の壊し方 まとめ】
- 【物理的な壁】の壊し方:
準備運動と「エコフォーム」で、指の痛みの原因である「力の入れすぎ」を解消し、楽に押さえる体の使い方を学びました。 - 【頭脳的な壁】の壊し方:
無意味な丸暗記を捨て、「コード・ファミリー」という仲間意識と、脳の仕組みを利用した効率的な記憶術で、賢く覚える方法を知りました。 - 【精神的な壁】の壊し方:
完璧主義を捨て、練習をゲーム化し、自分の小さな成長を「見える化」することで、「楽しい!」という最強のガソリンを自ら補給する方法を身につけました。
もう、あなたが「自分には才能がないから…」なんて言葉に、心を惑わされる必要はどこにもありません。あなたはただ、正しい地図を持っていなかっただけなのです。
では、このページを閉じた後、あなたに最初にしてほしいことがあります。
それは、今日ご紹介した指のストレッチをやってみること。そして、一番簡単そうな「Em」のコードを、エコフォームを意識しながら、押さえてみてください。
綺麗な音が出なくたって、全く構いません。その、ちょっとした変化から、あなたの新しい、そして本当の意味でのギターライフが始まります。
コードは、音楽というパズルを組み立てるための、色とりどりの美しいピースのようなものです。そのピースの組み合わせ方を知ったあなたは、これから、
- 大好きなあの曲を、自分の手で奏でられるようになる喜び。
- 仲間とバンドを組んで、一つの音楽を作り上げる一体感。
- 自分の想いをメロディーに乗せて、オリジナル曲として形にする創造性。
そんな、想像するだけでワクワクするような未来への扉を開いたのです!
ギターは、あなたのこれからの人生において、嬉しい時には一緒に喜びを分かち合い、悲しい時には黙って隣で音を奏でてくれる、かけがえのない「一生の相棒」になってくれるはずです。
あなたのギターライフが、今日この瞬間から、より豊かで、笑顔に溢れたものになることを、心から願っています。
もしまた道に迷ったり、新しい壁にぶつかったりした時は、いつでもこの記事を、そして私たちの「ギターの処方箋」を頼ってくださいね。私たちは、いつでもあなたの味方です!
ギターの処方箋TAKAMURA
代表 高村尚平
\是非一度遊びにきてくださいね/
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