ギターチューニングの完全ガイド
初心者から上級者まで、正確な手順とコツを美しく解説
はじめに
ギターを弾く上で欠かせないのが「チューニング」。正確なチューニングは、美しい音楽を奏でるための絶対条件です。
初心者の方は「やり方がよく分からない…」「すぐに狂ってしまう…」と悩むことも多いですし、上級者でも「もっと精度の高いチューニングがしたい」「効率的な方法を知りたい」と感じる場面があるのではないでしょうか?
こんにちは。ギターの処方箋TAKAMURA代表の高村尚平です。
これまで20年以上、初心者からプロ志向の方まで幅広く指導してきた経験から、今回は「正確で安定したチューニングの方法」をステップごとにわかりやすくお伝えします。
この記事を読めば
- 初心者の方は「まず迷わず正しくチューニングができるように」
- 中・上級者の方は「より精密なチューニング技術が身につく」
- すべての方に「チューニングが狂う原因と対策が理解できる」
ギターが気持ちよく響くと、演奏もどんどん楽しくなりますよ!
ギターチューニングの基本知識
標準チューニングとは?

まずはギターの基本となる「標準チューニング(レギュラーチューニング)」を確認しましょう。
これは世界中で最も使われているチューニングで、ほとんどの楽曲がこのチューニングを前提に作られています。
6弦(太い弦)から順に:
- 6弦 E(ミ) 82.4Hz
- 5弦 A(ラ) 110Hz
- 4弦 D(レ) 146.8Hz
- 3弦 G(ソ) 196Hz
- 2弦 B(シ) 246.9Hz
- 1弦 E(ミ) 329.6Hz
覚え方のコツ
覚えにくい場合は、「ミ・ラ・レ・ソ・シ・ミ」と呪文のように声に出して覚えると効果的です。
英語表記では「E-A-D-G-B-E」となります。
また、「Every Amateur Does Get Better Eventually」(すべてのアマチュアは最終的に上達する)という英語の覚え方もあります。
なぜ正確なチューニングが必要?
正確なチューニングは、ギター演奏の基礎中の基礎です。
その重要性を具体的に見てみましょう。
- コードが綺麗に響く:各弦が正確にチューニングされていることで、和音が美しく調和します
- 他の楽器と合わせやすい:バンドやアンサンブルで演奏する際に必須です
- 音感が育つ:正しい音程を常に聞くことで、自然と音感が鍛えられます
- 弾く楽しさが倍増する:正確な音程で弾けると、演奏の満足度が格段に上がります
- 録音・配信時の品質向上:現代では動画投稿や配信も多く、音程の正確性は重要です
重要なポイント
つまり、「チューニングがズレたままでは、どれだけ上手に弾いても、綺麗に聞こえない」んですね。
逆に言えば、正確なチューニングができれば、演奏レベルが一段階上がったように聞こえます。
チューニングの歴史豆知識
現在の標準チューニング(A=440Hz)が国際標準として定められたのは1939年のことです。
それ以前は地域や楽器によって基準音が異なっていました。
ギターの標準チューニングも時代とともに変化し、現在の形になったのは比較的最近のことなんです。
チューニングに必要な道具と準備

チューニング方法別・必要な道具比較
方法 | 必要な道具 | 精度 | 初心者向け | 価格帯 |
---|---|---|---|---|
クリップ式チューナー | チューナー本体のみ | ★★★★★ | ★★★★★ | 1,000〜5,000円 |
スマホアプリ | スマートフォン | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | 無料〜500円 |
音叉 | 音叉(A=440Hz) | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | 500〜2,000円 |
ピアノ・キーボード | 鍵盤楽器 | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | 楽器による |
ハーモニクス | 基準音源 | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ | – |
おすすめ基本アイテム
クリップ式チューナー
- BOSS TU-03(高精度、見やすい表示)
- KORG AW-4G(コスパ良好、軽量)
- TC Electronic UniTune Clip(ストロボモード搭載)
クリップ式チューナーの詳しい選び方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
スマホアプリ(サブとして)
- GuitarTuna(無料、使いやすい)
- Cifra Club Tuner(多機能)
- Boss Tuner(BOSS公式アプリ)
上級者向けアイテム
- 音叉(A=440Hz、耳を鍛えるのに最適)
- ピッチパイプ(全音程対応、アコースティック環境で便利)
- ストロボチューナー(±0.1セント精度、プロ仕様)
あると便利なアイテム
- ギタースタンド:安定した姿勢でチューニングできる
- 弦ワインダー:弦交換時の効率アップ
- 替えの弦:古い弦はチューニングが不安定
- クロス:弦の汚れを拭き取ることで音程が安定
- 湿度計:環境管理でチューニングの安定性向上
プロからのアドバイス
初心者の方にはクリップ式チューナーを強くお勧めします。
周囲の音に影響されにくく、暗い場所でも見やすく、何より正確です。
スマホアプリは便利ですが、周囲の騒音に影響されやすいため、メインではなくサブとして使うのがベストです。
チューナーを使った基本的なやり方
チューニングの基本原則
- 静かな環境で行う:周囲の音がチューナーの反応を妨げます
- 6弦から順番に:太い弦から細い弦へと順序立てて行います
- 少しずつ調整:急激な変化は弦に負担をかけます
- 最後に再確認:全弦の張力バランスで微調整が必要です
環境と道具の準備
- 静かな場所を選ぶ:テレビや音楽を消し、できるだけ静寂な環境を作る
- ギターを安定させる:スタンドを使うか、膝の上にしっかりと固定
- チューナーを装着:クリップ式チューナーをヘッドの先端に装着
- 照明を確認:チューナーの表示が見やすい明るさに調整

クリップ式チューナーをヘッドに装着した状態
チューナー装着のコツ
クリップ式チューナーは、ヘッドの先端部分に装着するのがベストです。
ペグ部分に装着すると、ペグの振動でチューナーが不安定になることがあります。
6弦(E)から順にチューニング
- 弦を軽く弾く:指で弦を軽く弾いて音を出す(強く弾きすぎない)
- チューナーの表示を確認:「E」と表示されるかをチェック
- 針の位置を見る:中央(0セント)になるよう調整
- ペグを少しずつ回す:一度に大きく回さず、少しずつ調整
調整のポイント
- 音が低い(♭表示) → ペグを時計回りに回して音を上げる
- 音が高い(♯表示) → ペグを反時計回りにして音を下げる
- 最後は必ず下から上げる:目標より少し低めにしてから上げると安定します
- ±5セント以内:実用的には±5セント以内であれば十分です
注意事項
ペグを回しすぎて弦を切らないよう注意してください。
特に1弦(細い弦)は切れやすいので、慎重に調整しましょう。
もし音が大幅にずれている場合は、一度に合わせようとせず、数回に分けて調整してください。
残りの弦を順次調整
6弦が完了したら、同じ要領で以下の順番で調整します:
- 5弦(A):110Hzの「ラ」の音
- 4弦(D):146.8Hzの「レ」の音
- 3弦(G):196Hzの「ソ」の音
- 2弦(B):246.9Hzの「シ」の音
- 1弦(E):329.6Hzの「ミ」の音(6弦より2オクターブ高い)
各弦の特徴
- 6弦・5弦:太くて安定しやすいが、音の立ち上がりが遅い
- 4弦・3弦:バランスが良く、チューニングしやすい
- 2弦・1弦:細くて切れやすいが、音の反応が早い
全体の再確認と微調整
すべての弦を一通り合わせたあと、もう一度6弦から順番にチェックします。
なぜ再確認が必要?
- 弦の張力バランス:他の弦の張力変化で微妙にずれる
- ネックの反り:全体の張力変化でネックが微妙に動く
- 温度変化:チューニング中の室温変化の影響
2〜3回繰り返すことで、チューニングが安定します。プロも必ず複数回チェックしています。
最終確認とテスト演奏
- 開放弦での確認:各弦を単音で弾いて音程をチェック
- 基本コードでの確認:Em、Am、Cなどの基本コードを弾いて和音をチェック
- オクターブチェック:12フレットの実音とハーモニクスを比較
テスト用基本コード
チューニング後は以下のコードを弾いて、和音が美しく響くかチェックしましょう:
- Em(イーマイナー):開放弦が多く、チューニングの精度がわかりやすい
- C(シーメジャー):全ての弦を使うため、全体のバランスがチェックできる
- G(ジーメジャー):高音弦と低音弦のバランスが確認できる
実践動画で学ぶチューニング方法
文章だけでは分かりにくい部分もあるかと思います。実際の手順を動画で確認してみてください。
初心者必見!本格ギターチューニング講座!これで完璧にチューニングができる!
上級テクニック
音叉を使ったチューニング方法
音叉は電子機器に頼らない、最も伝統的で確実なチューニング方法です。
耳を鍛える効果も高く、上級者には特におすすめです。
音叉チューニングの手順
- 音叉を振動させる:膝や机の角に軽く当てて振動させる
- 音を増幅する:ギターのボディやヘッドに当てて音を大きくする
- 5弦と合わせる:5弦(A)の開放弦を音叉の音に合わせる
- 相対チューニング:5弦を基準に他の弦を調整
相対チューニングの詳細手順
- 6弦5フレット = 5弦開放:同じ「A」の音
- 5弦5フレット = 4弦開放:同じ「D」の音
- 4弦5フレット = 3弦開放:同じ「G」の音
- 3弦4フレット = 2弦開放:同じ「B」の音(※ここだけ4フレット)
- 2弦5フレット = 1弦開放:同じ「E」の音
音叉使用のコツ
- 振動の持続:音叉は約30秒間振動し続けます
- 共鳴の活用:ギターボディに当てると音が大きくなります
- 耳の訓練:最初は難しくても、続けることで音感が向上します
ハーモニクスを使った精密チューニング
ハーモニクス(倍音)を使ったチューニングは、最も精密で美しい方法の一つです。
プロのギタリストも愛用する上級テクニックです。

慣れればハーモニクスチューニングは誰にでもできます!
ハーモニクスの出し方
- 指を軽く触れる:弦を押さえずに、軽く触れるだけ
- フレット真上に配置:フレットワイヤーの真上に指を置く
- 弾いた直後に離す:ピッキング直後に指を弦から離す
- クリアな音を確認:澄んだ高い音が出ることを確認
ハーモニクスチューニングの手順
- 基準を作る:
- 6弦7フレットハーモニクス = 5弦5フレットハーモニクス
- 両方とも「A」の音(オクターブ違い)
- 順次調整:
- 5弦7フレット = 4弦5フレット(「D」の音)
- 4弦7フレット = 3弦5フレット(「G」の音)
- 特殊な調整:
- 3弦4フレット実音 = 2弦開放弦(「B」の音)
- 2弦5フレット実音 = 1弦開放弦(「E」の音)
- 最終確認:
- 6弦7フレットハーモニクス = 1弦開放弦(2オクターブ関係)
- 各弦12フレットハーモニクス = 開放弦(オクターブ確認)
重要なポイント
3弦と2弦の関係は特殊です。
他の弦間が完全4度(5半音)なのに対し、3弦と2弦は長3度(4半音)の関係になっています。
そのため、ハーモニクス同士では合わせにくく、3弦の4フレット実音と2弦の開放弦で合わせるのが一般的です。
ハーモニクスが出やすいフレット
- 12フレット:最も出やすく、開放弦の1オクターブ上
- 7フレット:完全5度上の音
- 5フレット:完全4度上の音
- 4フレット:長3度上の音(少し難しい)
- 3フレット:完全5度上の音(上級者向け)
プロが使う特殊チューニング法
ストレッチチューニング
新しい弦を張った直後に行う、弦を意図的に伸ばすテクニックです。
- 通常通りチューニングする
- 各弦を軽く引っ張って伸ばす(プリストレッチ)
- 再度チューニングする
- この作業を2〜3回繰り返す
温度補正チューニング
演奏環境の温度を考慮したチューニング方法です。
- 寒い場所での演奏:わずかに低めにチューニング
- 暑い場所での演奏:わずかに高めにチューニング
- ライト使用時:照明の熱で弦が伸びることを考慮
トラブルシューティング
チューニングが狂う主な原因と対策
新しい弦の場合
原因
- 弦がまだ伸びきっていない
- 巻き方が不適切
- 弦の材質による初期伸び
対策
- プリストレッチ:弦を軽く引っ張って伸ばす
- 頻繁なチューニング:張り替え後1週間は毎日チェック
- 適切な巻き数:ペグに3〜4回巻く
- 段階的調整:一度に正確な音程まで上げず、段階的に調整
古い弦・劣化した弦の場合
症状
- チューニングしてもすぐに狂う
- 音程が不安定
- 音色が曇っている
- 弦に汚れや錆が見える
対策
- 定期的な交換:月1〜2回の交換が理想
- 弦の清拭:演奏後は必ずクロスで拭く
- 保管環境の改善:湿度管理で弦の寿命を延ばす
環境要因による影響
影響する要因
- 温度変化:10℃の変化で約20セントずれる
- 湿度変化:木材の膨張・収縮でネックが動く
- 気圧変化:天候による微細な影響
- 季節変化:夏と冬で大きく環境が変わる
対策
- 演奏前チェック:必ず練習・演奏前にチューニング
- 環境順応:新しい環境では15分程度馴染ませる
- 保管環境の管理:適切な温湿度での保管
楽器自体の問題
考えられる問題
- ペグの不具合:回転が重い、滑る、ガタつく
- ナットの問題:溝が深すぎる、浅すぎる、摩耗
- ブリッジの問題:サドルの位置、高さの不適切
- ネックの反り:順反り、逆反り、ねじれ
対処法
これらの問題は専門知識が必要です。
無理に自分で修理しようとせず、楽器店やリペアショップに相談することをお勧めします。
特にネックの調整は楽器を傷める可能性があるため、プロに任せましょう。
緊急時の応急処置
弦が切れた場合
- 残りの弦を緩める:張力バランスの急変を防ぐ
- 代替チューニング:5弦で演奏できる楽曲に変更
- カポタストの活用:音域を調整して演奏継続
チューナーが故障した場合
- スマホアプリを使用:緊急時の代替手段
- ピアノとの比較:近くにピアノがあれば活用
- 相対チューニング:1本の弦が正確なら他も合わせられる
よくある質問(FAQ)
練習前には必ずチューニングをチェックすることをお勧めします。
新しい弦の場合は特に頻繁に狂うため、練習中も定期的に確認しましょう。
環境の変化(温度・湿度)によってもチューニングは狂いやすくなります。
プロのギタリストは、ライブ中でも曲間にチューニングをチェックしています。
多くのチューナーアプリは十分な精度を持っていますが、周囲の騒音に影響されやすいという欠点があります。
より正確で安定したチューニングを求める場合は、クリップ式チューナーの使用をお勧めします。
アプリは緊急時やサブツールとして活用するのがベストです。
主な原因として、以下が考えられます:
- ペグを急激に回しすぎている
- 古い弦を使っている
- ナットやブリッジに問題がある
- 弦の巻き方が不適切
ペグは少しずつ調整し、定期的に弦を交換することで改善できます。
チューニングは合っていても、以下の要因で音質が悪くなることがあります:
- オクターブ調整:12フレットの音程がずれている
- 弦高の問題:弦とフレットの距離が不適切
- フレットの摩耗:古いギターでよく見られる問題
- ネックの反り:適切な調整が必要
これらの問題は楽器店での調整(セットアップ)で解決できます。
ハーモニクスチューニングは必須ではありませんが、以下のメリットがあります:
- 非常に高い精度でのチューニングが可能
- 耳の訓練になる
- 電子機器に頼らない確実な方法
初心者の方はまずクリップ式チューナーをマスターし、慣れてからハーモニクスに挑戦することをお勧めします。
季節による温度・湿度の変化が主な原因です:
- 温度変化:弦の張力が変化し、音程が変わる
- 湿度変化:木材が膨張・収縮し、ネックの形状が微妙に変わる
- 気圧変化:わずかですが音程に影響する
季節の変わり目は特に注意深くチューニングをチェックしましょう。
まとめ
チューニングはギター演奏の”土台”です。
どれだけ素晴らしいテクニックを持っていても、チューニングが狂っていては美しい音楽は生まれません。
今回お伝えしたポイント
- まずはチューナーで正確にチューニングするのが基本
- ペグは少しずつ回すのがコツ
- すべての弦を合わせたあとに再確認
- 新しい弦は安定するまで時間がかかる
- 環境の変化に気を配り、練習前のチェックを習慣に
- 上級者はハーモニクスや音叉も活用する
- トラブルが起きたら原因を特定して適切に対処する
クリップ式チューナーの詳しい選び方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
初心者の方は、まずクリップ式チューナーでの方法をしっかり身につけましょう。
慣れてきたら、耳を使ったチューニングやハーモニクスにも少しずつ挑戦してみてくださいね。
チューニングが正確に決まると、音楽の世界がぐっと楽しくなります!
分からないことがあれば、いつでもギターの処方箋TAKAMURAにご相談ください。
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