【完全版】
BOSS BD-2はなぜ”怪物”なのか?
歴史とサウンドを丸裸にし、その魅力に迫る
こんにちは。
ギターの処方箋TAKAMURAの高村尚平です!
数々の名機を生み出してきたBOSSコンパクトエフェクター。
その中でも、ひときわ異彩を放ち、初心者からプロまで、なぜか誰もが一度は通る「青い箱」があります。
そう、BD-2 Blues Driverです!
決して語れない”怪物”なのでしょうか?
BD-2は、ただ音を歪ませるだけの機材ではありません。
ギタリストの感情を映し出す鏡であり、時には牙をむく暴れ馬であり、そして、私たちを育ててくれる最高の師でもあるのです。
この記事では、私自身の経験を通して、BD-2の魅力の奥深くまで潜っていこうと思います。
教科書的な解説だけでは絶対に見えてこない、このペダルの「生きた使い方」と「本当の魅力」に、徹底的に迫ります。
この記事で探求すること
- ・ BD-2が生まれた「時代」の匂いとは?
- ・ あの「ジャリジャリ感」の本当の正体と、それを武器に変える方法
- ・ 私がBD-2を嫌いになりかけた、苦い失敗談(笑)
- ・ ギタリストを「育ててくれる」ペダルとしてのBD-2
この記事を読み終える頃には、あなたはただのBD-2ユーザーではなく、その魂を理解した「BD-2マスター」になっているはず!
そして、あなたの足元にある青い箱が、今までとは全く違う音を奏で始めることをお約束します。
それでは、始めましょう。
怪物の腹の中を、一緒に探検してみましょう!
* * *
第1章:BD-2″以前”と”以後” ― なぜこの青い箱は革命だったのか?
BD-2の本当のスゴさを知るには、少しだけ時代を巻き戻してみる必要があります。
「BD-2が生まれる前、オーバードライブの世界はどうだったのか?」
歴史の授業みたいになってしまっております(笑)
ただ、ここまで巻き戻さないとBlues Driverは語れないので、少し我慢してお付き合いください!
1-1. オーバードライブ戦国時代:Tube Screamerが築いた「常識」
BD-2が誕生した1995年より前、オーバードライブの世界には絶対的な王様がいました。
そう、IbanezのTube Screamer(TS系の元祖)です。
緑色のそのペダルは、ギターサウンドの「中音域(ミッド)」をグッと持ち上げることで、甘く、粘りのある、非常に音楽的なサウンドを生み出しました。
バンドアンサンブルの中でも音が埋もれず、ソロを弾けばどこまでも歌ってくれるような感覚。
まさにそれは、オーバードライブの一つの「正解」であり、「常識」にすらなっていました。
オーバードライブの「歴史」を創った名機
1-2. 1995年、音楽シーンが求めた「生々しさ」
しかし、時代は移り変わります。
90年代初頭、音楽シーンには大きな動きが起きていました。
シアトルから生まれた「グランジ」の波です。
Nirvanaに代表される彼らのサウンドは、綺麗に整えられたものとは真逆。
どこか壊れかけで、危うくて、感情が剥き出しになったような「生々しさ」に満ちていました。
そんな時代の空気が、ギタリストたちに新たな渇望を抱かせます。
「TS系みたいなサウンドも良いけど、もっとアンプを直接歪ませたみたいな、荒々しくてダイレクトな音が欲しい!」
「ピッキングの強弱で、クリーンと歪みを自在に行き来できるような、表現力の高いペダルはないのか?」
そんな時代の渇望の中、彗星の如く現れたのがBD-2だったのです!
中音域をブーストするのではなく、フルレンジ(全音域)で、ギターとアンプの個性を活かしながら歪みを足していく。このコンセプトは、当時の「常識」を覆す、まさに革命的な出来事でした。
この記事の”主役”
BOSS BD-2 Blues Driver
ギタリストの感情を映し出す、万能オーバードライブ。ピッキングの強弱でクリーンからクランチまで自在に表現できる、まさに”怪物”と呼ぶにふさわしい一台。
Amazonでチェック1-3. 「ディスクリート回路」という心臓部:BOSSの本気と設計思想
ここから、ほんの少しだけマニアックな話になります(笑)
当時のコンパクトエフェクターの多くは、「IC(集積回路)」という、いわば「出来合いの料理キット」のようなパーツを使って作られていました。
効率的で安定している反面、設計の自由度は高くありません。
しかし、BD-2は違いました。
心臓部に「ディスクリート回路」を採用したのです。
ちょっと難しいですよね(笑)できるだけ簡単に解説いたしますのでご安心を!
簡単に言うと、IC(料理キット)を使わずに、トランジスタや抵抗といった部品(食材)を一つ一つ吟味して組み合わせる「こだわりの手作り料理」みたいなものです(笑)
これにより、設計者はサウンドを徹底的に追い込むことができたわけですが、その結果として生まれたのが、あの驚異的なピッキングへの反応の良さ(レスポンス)と、広いゲインレンジだったのです。
BOSSが「新しい時代のスタンダードを作るぞ」という、並々ならぬ気合でBD-2を開発したことが伺えるエピソードですよね。
* * *
第2章:そのサウンド、言語化できますか? ― BD-2の音の正体を暴く
BD-2の音を表現する時、「鈴鳴り」とか「バイト感」とか、色々な言葉が使われます。
でも、それっていったい何なのでしょう?
ここではその正体に、私なりの解釈で迫ってみます。
2-1. 「鈴鳴り」と「バイト感」の正体:ギタリストを魅了する高音域の秘密
私の解釈では、BD-2のサウンドの核は「高音域の倍音の出方」にあります。
鈴鳴り(GAINが低い時)
ピッキングした瞬間、原音のアタック音に追随して「チリリンッ」と鳴る、非常に繊細で美しい高音域の倍音。
これが、クリーンサウンドにハリと立体感を与え、カッティングを弾いた時に他の楽器に埋もれない「抜け」を生み出します。
まるで、音の輪郭を上質な銀色のペンでなぞったような感覚です(笑)
バイト感(GAINが高い時)
GAINを上げていくと、この高音域の倍音がだんだん攻撃的になってきます。
>ピッキングに対して「ガリッ!」「ジャキッ!」と食いついてくるような、鋭いエッジ感。これが「バイト(Bite=噛みつく)感」の正体です。
このバイト感があるからこそ、BD-2は音が太いのに、決してこもらず、ロックなリフを弾いた時にも存在感を失わないのです。
2-2. 賛否両論?「ジャリジャリ感」は敵か、味方か
そして、この「バイト感」が行き過ぎると言われるのが、BD-2の問題点として取り上げられることのある有名な「ジャリジャリ感」です。
確かに、TONEやGAINを上げすぎると、高音域が飽和して耳に痛いサウンドになることがあります。
これを「BD-2の弱点」と切り捨てるのは簡単ですが、私はこう考えます。
例えば、ギター&ボーカルの3ピースバンドを想像してみてください。
音が少ないアンサンブルの中では、ギターの音が少し細く聞こえがちです。
そんな時、この「ジャリジャリ感」が、他の楽器との隙間を埋める「音の壁」のような役割を果たしてくれるんです。
音が飽和しているからこそ生まれる、独特のコンプレッション感とサステイン。これは、整えられた綺麗な歪みでは決して得られない、荒々しい魅力と言えるでしょう。
大切なのは、この個性を「コントロール」すること。
TONEを絞ったり、後述する他のペダルと組み合わせたり、アンプのセッティングで調整したり…。
この暴れ馬を乗りこなせた時、あなたは他の誰にも真似できない、自分だけのサウンドを手に入れることができるのです。
* * *
第3章:3つのツマミで操る「音の味付け」
BD-2のツマミは、たったの3つ。
しかし、その組み合わせで作れるサウンドは無限大です。
ここでは3つのツマミの相互作用を、もっと身近な「料理の味付け」に例えて考えてみましょう(なぜか料理にばかり例えてしまいます…笑)
これらは独立した調味料ではなく、お互いの味を引き立て合う、絶妙なバランスで成り立っているのです。
- GAIN:料理の「味の濃さ」を決める、塩コショウのような存在。
- TONE:料理の「風味」を足す、スパイスやハーブ。
- LEVEL:出来上がった料理の「盛り付け量」。
まずGAIN(塩コショウ)で、歪みという味のベースを決めます。
これを上げればサウンドは力強くなりますが、それだけでは大味になってしまうこともあります。
そこでTONE(スパイス)の出番です。
GAINを上げたことで少し暴れ気味になった高音域を、TONEを絞ってマイルドにしたり、逆にTONEを上げて風味を足し、より刺激的なサウンドに仕上げたりします。
そして最後にLEVEL(盛り付け量)で、アンプというお皿に、出来上がったサウンドを適切な音量で盛り付けるのです。
どうです?こんな風にイメージすると、音作りがよりクリエイティブな作業に感じられませんか?
「GAINを上げたからTONEで調整する」という機械的な操作ではなく、「メインの味を濃くしたから、スパイスで香りを整えよう」と考える。
この発想こそが、あなただけのサウンドレシピを見つける方法なのです。
* * *
第4章:ギターのボリューム操作を極める ― BD-2が最高の練習台になる理由
さて、ここが最重要ポイントかもしれません。
この「ギター本体のボリューム操作への追従性」こそ、BD-2のアイデンティティであり、ギタリストが絶対にマスターすべきテクニックを磨く教科書とも言えるのです!なので、章を改めて、もっと深くお話しさせてください。
なぜBD-2はボリューム操作にこんなに敏感なのか?
それは、第1章でお話しした「ディスクリート回路」と「フルレンジ設計」の賜物なのです。入力された信号の強弱(=ギターのボリューム)に対して、非常に素直に反応するように設計されているからです。
これを使いこなせると、何が起きるか。
足元のペダルを踏み変えることなく、バッキングからソロまで、音色のグラデーションを右手だけで生み出せるようになります。
* * *
第5章:【超・実践編】プロが現場で使うシチュエーション別セッティング10選
さて、お待たせしました!
ここからは、より具体的でマニアックなセッティング例をご紹介します。
使用するギターやアンプまで想定してみましたので、ぜひ参考にしてください。
-
1. 【Fenderアンプ × シングルコイル用】鈴鳴りカッティング
GAIN: 9時 / TONE: 2時 / LEVEL: 1時
Fenderアンプの煌びやかなクリーンに、BD-2の「鈴鳴り」を足すセッティング。ファンクやポップスに最適。 -
2. 【Marshallアンプ × ハムバッカー用】80’sハードロック・リフ
GAIN: 11時 / TONE: 11時 / LEVEL: 12時
すでに歪んでいるMarshallを、さらにプッシュ!音が太いのに輪郭がハッキリする、魔法のセッティング。 -
3. 【JC-120を”鳴かせる”】魔法のクランチ
GAIN: 10時 / TONE: 10時 / LEVEL: 1時
多くのギタリストを悩ませるJC-120。その硬さを、BD-2のバイト感と適度なコンプ感で「音楽的な音」に変えます。TONEを上げすぎないのがミソ。 -
4. 【ハムバッカー用】なんちゃってP-90サウンド
GAIN: 10時 / TONE: 3時 / LEVEL: 12時
こもりがちなハムバッカーのフロントPUで、TONEを大胆に上げてみてください。P-90のような、甘さと歯切れの良さが同居した不思議なトーンに。 -
5. 【カントリー用】チキンピッキング・トーン
GAIN: 9時 / TONE: 1時 / LEVEL: 2時
コンプレッサーを前段に置き、このセッティングで弾けば、あの「パキパキ」した気持ちいいサウンドが手に入ります。 -
6. 【ボリューム奏法用】究極のレスポンス・セッティング
GAIN: 2時 / TONE: 11時 / LEVEL: 1時
第4章で紹介した練習に最適なセッティング。この状態で手元を操れれば、あなたはもう中級者です。 -
7. 【シューゲイザー用】音の壁クリエイター
GAIN: MAX / TONE: 12時 / LEVEL: 11時
後段にリバーブとディレイを深めにかければ、あの轟音の壁が作れます。BD-2の「ジャリジャリ感」が、ここでは最高の武器になります。 -
8. 【ジャズ用?】ウォーム&ファット・トーン
GAIN: 8時(ほぼゼロ)/ TONE: 9時 / LEVEL: 12時
ギター本体のTONEも絞り気味に。BD-2の高音をカットし、プリアンプ的なハリだけを借ります。意外とメロウで太い、使える音。 -
9. 【ベース用】歪みベースの隠し味
GAIN: 10時 / TONE: 10時 / LEVEL: 12時
実はベーシストにも愛用者が。音の芯を失わずに、ドライブ感を加えたい時に最適です。 -
10. 【高村尚平・秘伝】ちょい足しプッシュ
GAIN: 8時 / TONE: 12時 / LEVEL: 2時
メインの歪みはアンプや他のペダルで作っておき、ソロの時だけこれを踏みます。歪みはほとんど足さず、LEVELで音量を上げ、TONEで少しだけ煌びやかさを足す。これにより、音が前に出ながらも、アンサンブルに綺麗に馴染みます。
* * *
第6章:私(高村尚平)の失敗談 ― 私がBD-2を嫌いになりかけた日(笑)
ここで少し、私の恥ずかしい話をさせてもらいます…笑
今でこそBD-2をベタ褒めしていますが、正直、初めて買った時は良さが全く分からず、一度手放しかけたことがあります。
あれは大学時代、初めてのBD-2を持ち込んだスタジオで有頂天になっていた私。
「プロも使ってるんだから、とりあえずGAINとTONEを上げとけば良い音するだろ!」と、両方とも3時くらいまで上げて、リハーサルに臨みました。
一人で弾いている時は、なんだかカッコイイ音に聞こえたんです。
でも、いざバンドで合わせてみると…「ギャーーーーー!!!」
私のギターだけが、耳に突き刺さる痛い音で、他の楽器と全く混ざらない。
ドラムのシンバルとぶつかりまくり、ボーカルからは「うるさい!」という顔をされ、散々な結果になってしまいました…。
その時の私は、「なんだこのペダル、全然使えないじゃん!」と、完全にBD-2のせいにしていました。
今思えば、完全に私の知識不足と慢心が原因です。
BD-2の「高音域の個性」や「アンプや他の楽器との関係性」を全く理解していなかった。
この失敗があったからこそ(実は他にもいろんな失敗がありますが…)、私はアンプのセッティングや、TONEの重要性、アンサンブルの中での音作りを、必死で勉強するようになりました。
BD-2は、私に「ギターは一人で弾くものじゃない。バンドの中でどう聴こえるかが一番大事なんだ」という、根本的な教えを、手痛い失敗とともに与えてくれた恩人(?)なのです。
もし今、あなたがBD-2の音作りに悩んでいるとしたら、それはチャンスかもしれません。
その悩みと向き合うことが、必ずあなたをギタリストとして成長させてくれますから。
* * *
第7章:ペダルボードの司令塔へ ― BD-2と他のエフェクター「奇跡の化学反応」
BD-2は単体でも素晴らしいですが、他のエフェクターと組み合わせることで、その真価は120%発揮されます。
ここでは、相性の良い組み合わせと「接続順」の哲学についてお話しします。
【接続順の哲学】
ペダルボードの接続順は、「音作りの工程」そのものです。
「①まずダイナミクスを整え(コンプ)→ ②周波数を加工し(ワウ)→ ③歪ませてキャラクターを決め(BD-2)→ ④最後に空間的な広がりを与える(空間系)」
この流れを意識するだけで、音作りの迷いが格段に減りますよ!
* * *
第8章:ギタリストを育てるペダル ― BD-2が教えてくれる、一番大切なこと
色々と語ってきましたが、私がBD-2を「名機」だと断言する最後の理由。それは、このペダルがギタリストを「育ててくれる」からです。
- GAINを上げれば暴れるし、TONEを上げれば耳に痛い。
だから、アンプやバンド全体の音を聴いて「調整する」耳が育ちます。 - ピッキングの強弱に驚くほど反応してくれる。
だから、感情を込めて弾くことの大切さと、指先の「繊細なコントロール」が身につきます。 - ギターのボリュームを絞れば、クリーンになる。
だから、ペダルに頼り切るのではなく、「ギター本体で音を作る」という発想が生まれます。
BD-2は、ただスイッチをONにするだけで完璧にサウンドになる魔法の箱ではありません。
使いこなすには、ギタリスト側の技術と耳、そしてバンドアンサンブルの理解が求められます。
しかし、それ故に、BD-2と真剣に向き合うプロセスそのものが、あなたをギタリストとして、ミュージシャンとして、一回りも二回りも大きく成長させてくれるのです。
* * *
おわりに
いやはや、とんでもない文字数になってしまいましたね(笑)ここまでお付き合いいただき、本当に、本当にありがとうございます!
BD-2は、発売から四半世紀以上経った今も、世界中のギタリストの足元で輝き続けています。
それは、この青い箱の中に、ギタリストが求める「普遍的な何か」が詰まっているからに他なりません。
それは、アンプのような生々しさであり、
指先に食いついてくるような表現力であり、
そして時には、ギタリストを悩ませ、成長させてくれる厳しさでもあります。
もしあなたの部屋の隅で、BD-2がホコリを被っているのなら、どうかもう一度、アンプに繋いであげてください。
そして、この記事で語ったような視点で、改めて彼と「対話」してみてください。
きっと、以前とは全く違う声で、あなたに応えてくれるはずです。
この長い長い記事が、あなたと、あなたのBD-2との関係を、より素敵なものにする一助となれたなら、これ以上の幸せはありません!
それでは、今日はここまで^^
あなたのギターライフが、最高のサウンドで満たされますように!
次回の記事も楽しみにしていてくださいね!
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