こんにちは!ギターの処方箋TAKAMURA、代表の高村尚平です。
ギターを愛する皆さんの中で、特にこれから人生の大きな節目を迎えようとしている方、あるいはお洒落として指輪を楽しみたいと考えている方にとって、一度は頭をよぎるちょっとした悩み。それが、「ギタリストと指輪」の問題ではないでしょうか?…とふと思いまして、この記事を書くことにしました(笑)

大切な指輪と、愛するギター。ギタリストなら誰もがこの関係に頭を悩ませます。
「ギターを弾く時、指輪って邪魔にならないのかな?」
「ファッションで指輪を着けたいけど、プレイに影響が出たら嫌だな…」
「なにより、これから交換する”大切な結婚指輪”。ギターを弾くことで、傷だらけになってしまったらどうしよう…」
そんな風に考えてしまう人も多いんじゃないでしょうか?
何を隠そう、私自身も結婚した当初、指輪をどう扱うべきか、大いに悩んだ一人です。実際、しばらくは着けたまま演奏していたのですが、あっという間に大切な結婚指輪が小傷だらけになってしまいました…。それ以来、考えた末に「演奏する時は外す」というスタイルに落ち着いた、という経緯があります。
一方で、イングヴェイ・マルムスティーンのように、たくさんの指輪をじゃらじゃらと着けながら、超絶的な速弾きを繰り広げるロックスターもいます。指輪がもはや彼のキャラクターの一部になっているかのようで、憧れた人も多いのではないでしょうか?
また、私の敬愛するラリー・カールトンのように、左手の薬指にした結婚指輪を外すことなく、あの甘く美しいトーンを奏でるレジェンドもいます。その姿は、音楽と人生が共にあることの象徴のようで、なんとも言えず素敵です。
このように、彼らのように、指輪とギターを両立させることはできないものか…。この葛藤は、ギタリストなら誰しもが一度は通る道かもしれません。
そこでこの記事では、この永遠のテーマともいえる「ギタリストの指輪問題」に、私自身の経験も踏まえながら、正面から向き合ってみたいと思います。
弦に指輪が当たって「カツン!」と鳴ってしまう不要なノイズ、スムーズなフィンガリングを妨げるひっかかり、そして、愛用のギターと大切な指輪、その双方についてしまう「傷」の問題…。こうしたギタリスト特有の悩みを一つひとつ解き明かし、それでも指輪を着けたいと願うあなたのための現実的な解決策まで、ギタリストの視点で、徹底的に解説していきます。
この記事を読み終える頃には、あなたの中にあったモヤモヤが晴れ、ご自身にとっての「指輪との最適な付き合い方」が、きっと見つかっているはずです。さあ、一緒にその答えを探しに行きましょう!
1. 結論から言うと… ギタリストと指輪の理想的な関係とは?
さて、様々な悩みや想いが交錯するこの問題ですが、まず最初に、ギター講師として、そして一人のギタリストとしての視点から、この問題について少し深く考察してみたいと思います。
もしあなたが、ギターの演奏品質やサウンドクオリティを1ミリでも、1%でも高く追求したいと考えるのであれば、理想的な答えは何でしょうか。
おそらくそれは、「演奏する時は、指輪を外す」だと思われます。
- ① 演奏への物理的な影響を完全にゼロにできるから
(フィンガリング時のひっかかりや、意図しないノイズの発生を防ぐ) - ② ギターと指輪、双方への傷のリスクを完全にゼロにできるから
(大切なギターと、何より大切な指輪を守る) - ③ 演奏に100%集中できるから
(「あっ、指輪が当たるかも…」という一瞬の迷いや雑念が、あなたのプレイの質を下げてしまうのを防ぐ)
プロの現場で、完璧なテイクが求められるレコーディングなどでは、こうしたわずかなリスクも排除するために、指輪を外して演奏に臨むギタリストが大多数を占めるのが現実です。
…と、これが一つの合理的な考え方ではあるのですが。
「はい、そうですか」と、簡単に割り切れないのが、私たち人間の面白いところであり、愛すべきところですよね。
特に、パートナーとの絆の証である結婚指輪は、ただの装飾品ではありません。できることなら、肌身離さず着けていたいと願うのは、ごく自然な感情です。また、ファッションとして選んだ指輪が、自分のスタイルやアイデンティティの一部になっている、という方もいらっしゃるでしょう。
ですから、この記事の目的は、「さあ、皆さん指輪を外しましょう!」と一方的に推奨することでは、決してありません。
この記事が目指すゴールは、指輪を着けて演奏することのメリットとデメリット(リスク)を、あなたが正しく、そして深く理解すること。その上で、これからお話しする具体的な影響や、様々な解決策という「判断材料」を元に、あなた自身が心から納得できる「指輪との付き合い方」を見つけ出すお手伝いをすることです。
理想も大切ですが、それと同じくらい、あなたの気持ちも大切です。両方を見据えながら、最適なバランスを探っていきましょう。
2. 【左手編】指輪がギター演奏に与える具体的な影響
ギター演奏の心臓部ともいえる、音程を作り出す左手(レフティの方は右手)。
だからこそ、この指に着けられた指輪の影響は、想像以上に大きく、そしてシビアに現れます。
ここでは、どの指が特に問題になりやすいのか、そして具体的にどのようなプレイに支障をきたすのかを、一つひとつ解き明かしていきましょう。

左手の指輪は、ノイズやフィンガリングの妨げなど、様々な影響を及ぼします。
影響度ランキング!一番弾きにくいのは、どの指?
より実践的な観点から影響の大きい順に、ランキング形式で見ていきましょう。
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第1位:人差し指
最も影響が大きいのは、実はこの人差し指かもしれません。その最大の理由は、Fコードに代表される「バレーコード(セーハ)」にあります。
セーハする際、人差し指は指板に対して側面からフラットに近い角度で弦を押さえます。この時、指輪の出っ張りや厚みが、1弦や6弦の弦、あるいは指板の角に直接接触してしまうのです。
これにより、セーハが不安定になって特定の弦がキレイに鳴らなかったり、「カツン」というノイズを発生させたりする原因となります。ギタリストにとって基本中の基本であるセーハで問題が起きるため、影響度は最も高いと言えるでしょう。
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第2位:薬指
結婚指輪を着ける方が多い薬指も、やはり影響は大きいです。問題となるのは主に「動きの制限」と「ノイズ」です。
幅のある指輪を着けていると、指の関節の自由な動きがわずかに阻害され、素早いフィンガリングの際に窮屈さを感じることがあります。そして最も顕著なのが、チョーキングやビブラートの際。弦を押し上げたり揺らしたりする動きの中で、指輪が隣の弦やフレットに接触し、「カツン!カツン!」という非常に耳障りなノイズを生み出してしまうのです。
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第3位:中指
薬指と同様の理由で、中指も影響を受けやすい指です。特にロックやブルースのソロで多用されるため、フレーズの表現力を大きく左右します。単音でのチョーキングやハンマリング、プリングといったテクニックの際に、指輪が弦やフレットに当たってしまい、意図しないノイズを発生させるケースが非常に多いです。
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第4位:小指
「小指はあまり使わないから大丈夫では?」と思うかもしれませんが、実はそんなことはありません。ジャズなどで多用されるテンションコードや、テクニカルな速弾きフレーズでは、小指の正確なコントロールが不可欠です。
特に、手の小さいギタリストにとって、小指の指輪は致命的なハンデになり得ます。「あとほんの数ミリ届けば、あのフレットに指が届くのに…!」というシチュエーションで、指輪のわずか1〜2mmの厚みが、越えられない壁となってしまうのです。
ギタリストを悩ませる「2大問題」
では、具体的にどのような問題が起きるのか。大きく分けると「ノイズの問題」と「フィンガリングの妨げ」という2つの問題に集約されます。
① ノイズ問題:「カチン!」という不快な音

チョーキングやビブラートの際に、指輪が弦やフレットに接触してノイズの原因になることがあります。
これは経験したことがある方も多いのではないでしょうか。クリーンなアルペジオを弾いている最中、あるいは感情を込めてプレイしている瞬間に、「カチン!」という金属質な音が鳴ってしまう現象です。
これは、指輪(特に金属製)が、弦やフレットといった金属パーツに接触することで発生します。特に、チョーキングで弦を押し上げたり、ビブラートで弦を揺らしたりする際に、このノイズは発生しやすくなります。
弦の振幅が大きくなることで、指輪が隣の弦やフレットに接触してしまうのです。こうしたノイズは、演奏の雰囲気を台無しにしてしまいます。アコースティックギターや、歪みの少ないクリーンサウンドで演奏している時は特に顕著で、レコーディング環境ではまず許容されないレベルのノイズとなってしまうでしょう。
② フィンガリングの妨げ:「ひっかかり」と「窮屈さ」
もう一つの大きな問題が、純粋な弾きにくさ、つまりフィンガリングへの物理的な干渉です。
指輪の厚みや幅が、指の独立した動きを微妙に制限し、なんとなく窮屈に感じる。あるいは、コードチェンジの際に、指輪が指板の角に一瞬ひっかかり、タイミングが遅れてしまう。こうした小さなストレスの積み重ねが、演奏全体のクオリティを下げてしまうのです。
特に手の小さい方や指が短い方にとっては、この問題はより深刻に感じられるはずです。スムーズなフィンガリングは、ギタリストにとっての生命線。そこに物理的な障害物が存在するという事実は、想像以上に大きなストレスとなるのです。
左手のポイント:演奏の妨げとなる主な原因は「意図しないノイズ」と「フィンガリングの窮屈さ」。特に人差し指でのセーハや、薬指・中指でのチョーキング/ビブラート時に影響が出やすい。
3. 【右手編】ピッキング&ストロークへの意外な落とし穴
さて、ここまで左手の指輪がもたらす影響について詳しく見てきましたが、「じゃあ、ピッキングをする右手なら、ほとんど問題ないんじゃない?」と思われるかもしれません。
確かに、左手に比べれば、演奏への直接的な影響は少ないと言えます。しかし、あなたのプレイスタイルや感覚の鋭さによっては、右手にも意外な落とし穴が潜んでいるのです。
① ブリッジミュート(パームミュート)時のノイズとひっかかり
これは特に、ロックやメタル系の音楽で、ザクザクとした重いリフを刻むギタリストに関係してくる問題です。
ブリッジミュート(手のひらの側面をブリッジに乗せて弦の響きを抑える奏法)をする際、小指や薬指に着けた指輪が、ブリッジのサドルやプレートといった金属パーツに「カチッ」「ガリッ」と接触してしまうことがあります。この意図しないノイズは、タイトなリフを弾けば弾くほど目立ち、リズムのキレを損なってしまう原因になりかねません。
また、ノイズだけでなく、ブリッジに指輪がひっかかかるような感触は、スムーズなピッキングの妨げとなり、地味ながらも演奏のストレスに繋がります。
② ストロークの振り心地(遠心力)への影響

重さのある指輪は、繊細なピッキングやストロークの感覚に影響を与えることがあります。
これは少しマニアックな視点かもしれませんが、右手の繊細な感覚を大切にするギタリストにとっては、非常に重要な問題です。
ある程度の重さがある指輪(例えばプラチナやゴールド製のもの)を着けていると、ストロークやカッティングで腕を振った際の「振り心地」が変わってしまうのです。指先に小さな重りがついた状態をイメージしていただくと、分かりやすいかもしれません。
このわずかな重さが、ストロークの遠心力に影響を与え、いつもと同じように腕を振っているつもりでも、無意識にピッキングの軌道がブレたり、手首のスナップの感覚が狂ったりすることがあります。もちろん、全ての人が体感できるほど大きな変化ではないかもしれません。しかし、「今日のカッティング、なんだかキレが悪いな…」と感じた時、その原因が実は指輪の重さだった、という可能性もゼロではないのです。
③ フィンガーピッキング時の「指の重さ」
アルペジオやスリーフィンガーといった奏法では、指一本一本の、しなやかで独立した動きが求められます。ここでも、指輪の「重さ」が影響してくることがあります。
繊細なフィンガーピッキングの最中に、指輪を着けた指の動きが、なんとなく重く、鈍く感じられてしまう。まるで、指先に小さなトレーニング用の重りをつけたような、わずかな抵抗感。
この感覚が、高速なパッセージでの指の追従性を妨げたり、タッチの強弱といった繊細なコントロールを微妙に狂わせたりすることがあるのです。これも非常にデリケートな感覚の話ですが、フィンガーピッキングを極めようとするギタリストにとっては、見過ごせない違和感となる場合があります。
右手のポイント:影響は限定的だが、ミュート時の「接触ノイズ」や、ストローク/フィンガリング時の「感覚の変化」といった、より繊細な部分で問題が起きることがある。
4. 最も気になる「傷」の問題|指輪とギター、双方のリスク
さて、演奏への影響は、慣れやプレイスタイルの工夫で、ある程度はカバーできる部分もあるかもしれません。
しかし、これからお話しする「傷」の問題は、一度ついてしまうと元に戻すのが非常に難しく、より深刻な問題と言えるでしょう。

演奏を重ねるうちに、指輪とギターはお互いを傷つけてしまう可能性があります。
ここでは、「指輪が受けるダメージ」と「ギターが受けるダメージ」の双方の視点から、そのリスクを具体的に見ていきます。
あなたの大切な指輪につく傷
何が原因で傷がつくのか?
犯人は、ギターに無数に存在する「金属パーツ」です。
通常の演奏では、指の腹で弦を押さえるため、指輪が直接弦やフレットに触れる機会は少ないかもしれません。しかし、フォームが崩れたり、ふとした瞬間に指が滑ったりした際に、不意に指輪が弦やフレットに「カツン!」と接触してしまうことがあります。
この一瞬の硬い物同士の接触が、柔らかい貴金属でできた指輪に、少しずつ傷を刻んでいってしまうのです。つまりギターを弾く限り、こうした不意の接触による傷のリスクと、常に向き合うことになります。
「じゃあ、自分の指輪は大丈夫?」素材別の傷つきやすさ比較

一般的な結婚指輪で使われるプラチナやゴールドは、ギターの金属パーツより柔らかいことが分かります。
ここで、指輪の素材として一般的な金属が、どれくらい傷に強いのかを見てみましょう。物質の硬さを示す指標の一つに「ビッカース硬度(Hv)」というものがあります。この数値が大きいほど、硬くて傷がつきにくい、とご理解ください。
- プラチナ (Pt900など)
結婚指輪の王道ですが、宝飾品に使われる金属の中では非常に柔らかいのが特徴です(硬度:約50〜60 Hv)。ギターの弦(ニッケル弦で約100 Hv以上)やフレットと比較すると、その差は歴然。不意に接触した際に小傷がつきやすいのは間違いありません。何を隠そう、私の結婚指輪がまさにそうでした。 - ゴールド (K18など)
プラチナよりは少し硬いですが、それでも柔らかい金属です(硬度:約120〜150 Hv)。ギターの金属パーツとほぼ同等か、それより柔らかいため、やはり傷は避けられません。 - シルバー (SV925など)
アクセサリーとして人気ですが、プラチナよりもさらに柔らかく(硬度:約25〜40 Hv)、非常にデリケートです。ギターを弾けば、傷がつきやすいでしょう。 - 【傷に強い素材①】チタン
近年、結婚指輪の素材としても人気です。非常に硬く(硬度:約170〜220 Hv)、プラチナやゴールドに比べて格段に傷がつきにくいのがメリットです。 - 【傷に強い素材②】タングステン
金属の中ではダイヤモンドに次ぐほどの、驚異的な硬さを誇ります(硬度:約1400〜1800 Hv)。ギターのパーツが束になっても、まず傷をつけることはできません。ただし、非常に硬いがゆえに、強い衝撃で「割れる」ことがある、サイズ直しがほぼ不可能、といったデメリットも存在します。
結論として、一般的なプラチナやゴールド製の指輪は、ギター演奏中の不意な接触によって、多かれ少なかれ傷がつく可能性があるということです。
あなたの大切なギターにつく傷
ここまでは指輪が”被害者”でしたが、今度は指輪が”加害者”になるケースです。特に、チタンやタングステンのような硬い素材の指輪をしている場合は、ギター側へのダメージがより深刻になります。
- ネック側面・指板へのダメージ
フィンガリング中に、指輪がネックの側面(指板の角あたり)に接触し、塗装や木部そのものに傷や凹みをつけてしまう可能性があります。特に、コードチェンジなどで指がバタついた際に起こりやすいです。 - ブリッジ周りへのダメージ
右手でブリッジミュートをする際に、指輪がブリッジプレートやサドルに当たり、傷をつけてしまうことがあります。
特に注意したいのが、ヴィンテージギターや高級モデルに多い「ラッカー塗装」のギターです。ラッカー塗装は非常にデリケートで、指輪のような硬いものが当たると、簡単に傷や凹みがついてしまいます。一度ついてしまった深い傷の修理は、高額な費用がかかることも珍しくありません。
傷問題のポイント:柔らかい指輪(プラチナ等)はギターによって傷つき、硬い指輪(チタン等)はギターを傷つける。このジレンマを理解することが重要。
5. それでも指輪を着けたい!ギタリストのための現実的な解決策と工夫
さて、ここまで指輪がもたらす様々なリスクについて、かなり詳しくお話ししてきました。「もう、指輪をしてギターを弾くのは諦めるしかないのか…」と、肩を落としてしまった方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、どうかご安心ください。この記事の目的は、皆さんを怖がらせたり、指輪を諦めさせたりすることではありません。
ここからは、いよいよこのギタリストの永遠のテーマに対する、現実的で前向きな解決策のお話です。「演奏の質も、大切な指輪も、愛用のギターも、全部守りたい!」そんなあなたのための、具体的な工夫を私なりにまとめてみました。完璧な答えは一つではありません。これらの中から、ご自身のスタイルに合うものを見つけ、組み合わせてみてください。
【基本の心得】① 演奏する時だけ外す習慣をつける
これが、あらゆるリスクをゼロにできる、最も確実で安全な方法です。「そんなことは分かっている」という声が聞こえてきそうですが、大切なのは「外した指輪を失くさない仕組み」を確立すること。そのために、「指輪の定位置」を決めておきましょう。
- ギターケースの小物入れの中
- 自宅アンプの上の、決まった場所
- 失くさないよう、専用のリングケースや小さな巾着袋を用意する
練習やライブの前に指輪を外し、終わったら必ずそこに戻す。この一連の動作を「チューニングをする」「シールドを差す」といった準備と同じレベルの”儀式”にしてしまうのです。
【未来への投資】② 傷に非常に強い素材の指輪を選ぶ
これは、これから指輪を購入する、特に結婚を控えている方に向けた選択肢です。前のセクションでも触れた、チタンやタングステンといった金属は、一般的なプラチナやゴールドに比べて、驚くほど傷に強いです。最近では、こうした新素材を使ったお洒落なデザインの結婚指輪もたくさんあります。
「自分はギタリストで、どうしても傷が気になる」ということをパートナーに正直に伝え、二人で一緒に、傷に強い素材の指輪を探してみる、というのは非常に賢明な選択だと思います。
【デザインで回避】③ 凹凸や角が少ない、シンプルな指輪を選ぶ

凹凸の少ないシンプルな「甲丸リング」は、演奏への影響を最小限に抑えられます。
素材と並んで重要なのが、指輪のデザインです。言うまでもなく、「シンプル・イズ・ベスト」。表面が滑らかな「甲丸(こうまる)リング」や、平らな形状の「フラットバンドリング」のように、凹凸や角が少ないデザインを選びましょう。
こうしたデザインは、万が一ギターに接触した際のダメージも最小限に抑えられますし、フィンガリングへの影響も少なくなります。逆に、宝石の立て爪があるものや、複雑な彫刻が施されているもの、エッジが立ったデザインは、ギター演奏においてはリスクが高まるので避けた方が無難です。
【場所を変える】④ 演奏中はネックレスに通して身に着ける
「結婚指輪だから、練習中も肌身離さず着けていたい…」その気持ち、とてもよく分かります。そんな方におすすめなのが、この方法です。演奏する時だけ指輪を外し、チェーンネックレスに通して首から下げておくのです。
これなら紛失の心配もありませんし、大切な指輪が常に自分と共にある、という安心感も得られます。最近では、指輪を簡単に通せる「リングホルダー」という機能がついたネックレスも販売されていますので、チェックしてみるのも良いでしょう。
【合わせ技】⑤ 練習内容によって「着ける/外す」を判断する
常に「100%着ける」か「100%外す」かで考える必要はありません。その日の練習内容によって、柔軟に判断する、というのも一つの手です。
- テクニカルなプレイやカッティングを練習する日 → 外す
- 理論の勉強や、ゆったりしたコード弾きが中心の日 → 着けたままでもOK
このように、自分の中でルールを決めてメリハリをつけることで、指輪を着ける時間を確保しつつ、リスクの高い練習に集中することができます。
【最終手段】⑥ ギター用の「ダミーリング」を用意する
これは少し発想を変えた方法です。大切な結婚指輪は、演奏前にきちんと外して保管しておく。その上で、ギターを弾く時だけ、傷がついても気にならない安価なファッションリングを着けるのです。
「そもそも、指に何も着けていない状態が落ち着かない」「指輪をしている感覚自体が、自分のスタイルの一部だ」という方にとっては、意外と有効な解決策になるかもしれません。
【最重要】⑦ パートナーへの正直な相談と、二人だけのルール作り

何よりも大切なのは、パートナーとのコミュニケーションです。
そして、これが何よりも一番大切なことです。特に結婚指輪の場合、これはあなた一人の問題ではありません。
- 自分はギターを愛するギタリストであること。
- あなたとの絆である指輪も、同じように、いやそれ以上に大切にしたいと思っていること。
- しかし、ギターを弾くことで、指輪に傷がついてしまう可能性が高いこと。
- だから、どうすれば両方を大切にできるか、一緒に考えたいということ。
これらの気持ちを、ご自身の言葉で、誠実にパートナーに伝えてみてください。その上で、「演奏の時だけは外させてもらうね」「もし傷がついても、それはギターを頑張っている証拠だと思ってくれるかな?」といった、二人だけのルールを作るのです。
パートナーからの理解という、何物にも代えがたいお守りがあれば、あなたはもう、罪悪感や不安を感じることなく、心からギター演奏と指輪のある生活を楽しめるはずです。
6. まとめ
ギタリストと指輪の問題、いかがでしたでしょうか。
この問題は、単に「弾きやすいか、弾きにくいか」という話だけではなく、「大切なモノを傷つけたくない」という物理的な問題、そして「常に身に着けていたい」という心理的な想いが複雑に絡み合った、非常にデリケートなテーマです。
この記事を通して、私がお伝えしたかったのはたった一つ。「完璧な正解はない。だからこそ、リスクを正しく理解した上で、あなた自身が心から納得できる『自分だけのルール』を見つけ出すことが何よりも大切だ」ということです。
指輪を着けたまま華麗にプレイするラリー・カールトンのようなプロもいれば、大切な指輪を守るために、演奏時は潔く外すことを選ぶプロもいます。どちらの選択も、ギタリストとして、そして一人の人間として、等しく尊重されるべき素晴らしいスタイルです。
この記事でご紹介した様々な知識や工夫が、あなたが自分らしいスタイルを確立するための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
ギターも、指輪も、どちらもあなたの人生を豊かにしてくれる、かけがえのない宝物のはずです。どうかこれからも、両方を大切にしながら、素晴らしいギターライフを送ってください。あなたの音楽活動を、心から応援しています。
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